斎藤が大学4年のとき、投げ過ぎて疲れていないのかと聞いたことがある。当時は東京六大学リーグ戦で毎週のように先発しながら、平日の練習も休んでいなかった。斎藤は、こともなげに言った。

「まあ、それ（休まないこと）は当たり前のことですけど。（当時の早大・應武篤良）監督からもよく言われるのは、『スター選手っていうのは、お客さんの前でプレーすることが一番なんだ。そのためにお前ができることは、少しでも長くグラウンドにいてチームを引っ張っていくことなんだ』ということなので」

　学生時代から常に何かを期待され、それを敏感に察知してきた。取材ではあえて期待に背くように振舞う場面もあったが、野球選手としては期待してくれる人のために多くのボールを投げてきた。だからこそ、大きな故障を経験しても、マウンドに戻ろうと懸命に努力を続けた。

4年秋、神宮大会決勝。学生最後のマウンドに上がると、斎藤は天を仰いだ　©︎Waseda Sports

　大学最後のシーズン、斎藤はグラブに「不死鳥」のマークを入れていた。

「永遠に飛び続ける、という意味を込めて。現役は40、50歳までできる限りやりたい」

　その願いは、叶わなかった。

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