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<引退>「現役は40、50歳まで」斎藤佑樹がグラブに刻んだ“不死鳥”のマーク…早大時代を知る記者が見た、繊細なスターの姿とは
text by
田村航平(文藝春秋)Kohei Tamura
photograph byWaseda Sports
posted2021/10/02 06:00
大きな期待を背負ってプロ野球の世界に飛び込んだ斎藤佑樹
右肩を故障し、プロ3年目以降は苦しい時間が長くなった。近年は、藁にもすがる思いで結果を求めていた。
「昔は誰かがアドバイスをくれたとしても、『俺のおかげで結果が出たんだ』って言われるのが嫌だったんですよ。でも今は、『俺のおかげ』って言う人が100人いてもいいから、結果を出したいと思う」
インタビューを受ける時は、必ず取材者の目をじっと見つめる。それは胸の内を見透かされているようで、「怖い」とさえ言う記者もいた。
「相手がどういう意図で質問しているのか、こっちも見たい。どんな答えを欲しがっているのかを理解すれば、応えられることもあるし。変なことを言わせようとしているなと思えば、それはかわしたいから」
それは打者がどの球種を待っているか、マウンドから観察することに似ているという。その観察眼は、投手・斎藤にとっても一番の武器だった。
数年前の筆者の結婚式では、シーズン中にもかかわらずビデオメッセージをくれた。映像は札幌ドームの通路で、祝福の言葉のあと「今後もいろいろ大変だと思いますが、僕も応援していますので頑張ってください」と結ばれていた。
若くしてさまざまな人生経験を積んできた彼の「今後もいろいろ大変」という言葉に、身が引き締まったことを覚えている。