酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大谷翔平が「イチロー以来の最多敬遠」に? 貧打エンゼルスの悲哀もホームラン王への朗報は…《3戦11四球はMLB記録》
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2021/09/25 19:15
ストライクゾーンで勝負してもらえず歩かされる。8月以降明らかに増えた大谷翔平の四球数は、強打者と認められた証拠だが……
・エンゼルス
大谷翔平 45本(95打点、率.255)
J.ウォルシュ27本(86打点、率.267)
M.スタッシ 12本(33打点、率.251)
J.メイフィールド 10本(35打点、率.214)
T.ウォード 8本(31打点、率.240)
トラウトらがいない打線は怖くない
ブルージェイズは40本塁打以上が2人、30本以上は3人、20本以上はL.グリエル(21本)も含め6人という強大な戦力。こんな中でゲレーロを歩かせるわけにはいかない。それでも7つ敬遠されているのは、かなりすごいことだ。
それに比べればペレスのロイヤルズは見劣りがするが、10本塁打以上は7人いる。ベニンテンディという勝負強い打者、そして10本塁打ながら72打点のメリフィールドら50打点以上は5人いて、それなりに得点力がある打線だ。
では、大谷のエンゼルスはどうか。
開幕時点ではマイク・トラウト、アンソニー・レンドーン、ジャスティン・アップトンという実績のある強打者がいたが、3人とも長期の負傷者リスト入り。ウォルシュこそ好成績を残しているが、実働選手で10本塁打以上は4人だけ。大谷を歩かせれば、あとはさほど怖くない打者が続くのだ。
マドン監督が大谷を2番で起用することが多いのは、打席が多く回ってくることに加えて、試合序盤は、上位打者は歩かせられることが少ないから。だが、中盤以降になってくれば大谷へのマークが厳しくなるのは仕方がないことだ。
トラウトも「3年連続最多敬遠」の悲哀を味わった
大谷がただ1人そびえている打線だけに、四球が増えるのも自然なこと。エンゼルスはトラウトが2017年から3年連続でリーグ最多敬遠を記録していた。大谷翔平が出てくるまでは、トラウトが同じような目にあっていたのだ。
今年、トラウトが戦線離脱せずに大谷と中軸を組んでいたら、ここまでの四球攻めはなかっただろうと思われる。
2016年までMLBでは、敬遠でもボールを投げなければならなかった。捕手が立って投手が遠く外れたミットに投げ込む敬遠でも、リーチがあって規格外のプレーを見せ続ける大谷なら――手元が狂ったボールを阪神時代の新庄剛志のように安打にしたり、スタンドに放り込む可能性があったかもしれない。
しかし今の申告敬遠では、打者はバットを一振りすることさえできない。無念さが募る。