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「批判される方々に心から…」日本のチームメートに嫉妬はなく温かい だが“難民認定ミャンマー代表GK”の言葉が哀切極まる理由
posted2021/09/18 17:02
text by
木村元彦Yukihiko Kimura
photograph by
Kentaro Takahashi
それでもサッカーは、フットサルは、続く。Y.S.C.C.横浜のフットサルチームのトレーニングは早朝6時から始まる。ピエリアンアウンは、同居人であるラカイン民族(ミャンマーのアラカン州の少数民族=仏教徒)の若者タンと一緒に早起きをして、8月2日以降、休むことなく参加を続けている。
「恥ずかしい話、どこか他人事でした」
チームメイトたちはどう見て、どう受けとめているのか。
キャプテンの宿本諒太はトレーニング前日に、日本に残留することを決めたミャンマー代表のGKが自分たちのチームの練習に参加するということを監督の前田佳宏から伝えられた。
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「明日から、こういう選手が来るからよろしく頼むぞと伝えられて、そこから僕なりにアウン(選手はこう呼ぶ)がどういう背景なのかを調べました。知れば知るほど、これは練習の前に選手全員で知っていた方が良いと判断して、チームのグループラインに彼の記事を投稿したんです」
ゴレイロ(フットサルのGK)の田淵ラファエル広史が、すぐにポジティブな反応を返してくれた。今年で30歳になる宿本はチーム最古参で、創設以来のY.S.C.C.のットサルチームの歴史を知っている。過去にはタイソンナムFCからレンタル移籍をしてきた2人のベトナム代表のフットサル選手とともにプレーした経験もある。
しかし、難民の選手と接するのは初めてであった。
「恥ずかしい話、日本代表戦で彼が3本指を立てたのは、僕もテレビで見ていましたし、それからYSのサッカーの方の練習に来ているというのも知っていましたが、どこか他人事でした」
「アウンと出遭った前と後では見える風景が違って来た」
そのGKがいきなり、自らがキャプテンとして集団をまとめているチームに入ってきた。
「クーデターを起こした軍隊に命がけで抗議するといったあんな大胆な行動をとったというのでどんな人物か、最初の練習から見ていたんですけど、すごく物静かで真面目な態度で練習に臨んでいる。優しいからこそ、抗議をしたんですね」
宿本は以降、サッカー以外のこともいろいろ関心を持つようになったという。