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鈴木優磨の駆け込み移籍は破談になったが…クラブ・ブルージュの「優等生」ぶりが豹変したワケ〈金満PSGのCL初戦相手〉
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byGetty Images
posted2021/09/15 17:01
シント・トロイデン残留となった鈴木優磨。彼の移籍をもくろんだベルギーの名門クラブ・ブルージュとはどんなクラブなのか?
8月中旬、現地在住のライターNさんからの原稿には、「GKからMFまでそつのない陣容がそろった。あとはFWだけ」と記されていた。その原稿に、少し書き加えた。「日本代表FW鈴木優磨を欲しがったのも、そういう事情かもしれない」と。
移籍金350万ユーロはブルージュにとって安くない
多くの噂が飛び交う移籍市場で、鈴木の名もブルージュの獲得候補として取りざたされていた。ボーナス抜きでも350万ユーロの移籍金を用意している、というものだった。その噂の真偽のほどは分からないが、現地のメディアで報じられたことは事実だ。
350万ユーロ+ボーナス。欧州のビッグクラブから見れば端金かもしれないが、ブルージュにとっては、決して小さくない額である。
コロナ禍の影響か、昨季のブルージュの補強費は総額470万ユーロだった。今夏支払った最高額は、レスターのU-23チームから21歳のアタッカー、カマル・ソワーを獲得する際の900万ユーロである。移籍市場が閉まる4日前のことだった。
8月半ば過ぎには、20歳のアメリカ代表MFオーウェン・オタソウィーをウォルバーハンプトンから400万ユーロで獲得した。残り5日となってからは、ソワーら5人を一挙に獲得している。最後の隠し玉はスターベクのワンダーキッド候補、300万ユーロで獲得した16歳のアントニオ・ヌサだった。
FWのイスは最後まで鈴木優磨に残されていたのでは
繰り返しになるが、この400万ユーロ前後という移籍金は、ブルージュにとって小さな額ではない。だが、支払う意義があるものなのだ。
2年前に385万ユーロでスウェーデンのクラブから獲得したオディロン・コスヌは今夏、2300万ユーロを残してレバークーゼンへと移籍していった。2年前にアストンビラに2500万ユーロで売却したウェズレイも、もともとは420万ユーロで獲得した選手だった。
イングランドでは壁に阻まれ、今季はローンで戻ってきたが、ブルージュにとってマイナス要素はひとつもない。その24歳のFWの復帰が決まったのが、8月27日のこと。それまで、FWのイスは鈴木のためにも残されていたのではと、妄想はかき立てられるのだ。