濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
芸能界からプロレスへ 「圧倒的にみんなを幸せに」“傾奇者”ウナギ・サヤカが目指すのは「スターダムのアイコン」《特別グラビア+インタビュー》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/09/11 06:00
フューチャー・オブ・スターダムとアーティスト・オブ・スターダムの2冠を達成したウナギ・サヤカ
フューチャー王座はスターダムのタイトルで唯一、保持期限がある。だから挑戦者としての“資格”も他のベルトとは違ってくるというのがウナギの主張だ。初参戦でも構わない。実績云々ではなくベルト保持期限内の選手はどんどん挑戦すればいいと。桜井、吏南、月山、3人ともウナギとのフューチャー王座戦でキャリア初のタイトルマッチを経験したのだった。
「みんながこのベルトをほしがって、みんなで取り合いができる、一番盛り上がるタイトルにしたい。私はベルトに育ててもらったので。(月山も)これで終わりじゃなくて、今回負けた悔しさをきっかけにして、またベルトに欲を出してくれたらいいし」
以前の自分がやられたように、ウナギは桜井と月山を圧倒した。「私という門の先には、もっともっと凄いヤツがいる」ということも伝えたかった。初参戦の相手との闘いは「何をやってくるか分からないから、実は怖い」そうだ。ウナギはその役目を買って出た。業界最大手のリングに初めて上がる覚悟と緊張。それはおそらく生え抜きには分からない感覚で、受け止めるのはウナギが最もふさわしいように思えた。防衛戦3試合、彼女は防衛回数や自身の成長を誇るのではなく、対戦相手の心情や今後の可能性について語っている。
「やっと楽しくなってきたんですよ、今」
最近のウナギは東京女子プロレス時代の技「上から山脈」を出すようにもなった。コーナーで相手の顔に自分の胸を押し付けるという「貧乳への制裁」(本人談)だ。スターダムではもともと得意な“楽しいプロレス”を封印していたが、ここにきて解禁。それだけスターダムでの闘いに慣れたということだろう。「レア技」の存在で、ファンの注目を途切れさせないことも意識している。
「私は常にすべてを楽しくしたいんです。スターダムみんなで爆発的に楽しいものを作りたい。ユニットが違ってもプロレスが好きなのは一緒じゃないですか。圧倒的にみんなを幸せにしたいですね」
日々の試合を乗り越えるだけでやっとのところから、スターダム全体に思いを巡らせるようになったのだ。
「私は普通の人よりたくさんのことを経験してきたと思うんですよ。シンクロでオリンピックを目指すかどうかということもあったし、チアリーディングで海外に遠征したり。芸能界でもいろんなことがあった。同じグラビア、アイドルの世界でやってきた子が自ら命を絶ってしまったこともある。私だってその気持ちが分からないわけじゃない。
いろんな経験、感情、今まで生きてきた中で感じてきたこと、そこで培った生き抜く力を見せたいです。諦めなければなんでもできるっていうのを。自分だけの人生ですけど、自分だけじゃなくみんなに何を見せられるかが勝負だと思ってます。最後に一花咲かせたいじゃないですけど……やっと楽しくなってきたんですよ、今」