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「今日で大復活」鷹木信悟がIWGP世界ヘビーの“呪い”を超えて復帰防衛! 悲願のG1クライマックス初制覇へ「昭和57年の最強を決めようじゃねえか」
posted2021/09/07 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
鷹木信悟は3週間実戦から遠ざかっていた。新型コロナウィルスに感染して8月15日の試合から欠場を余儀なくされていた。幸い軽症だったというが、予定されていたタイトルマッチであったとはいえ、9月5日、メットライフドーム(西武ドーム)の復帰戦でいきなりEVILの挑戦を受けた。
「不安がないわけではなかった。コロナウイルスをなめているわけではない。でも、オレの中では最初からメットライフドームを休むことは頭になかったよ。熱が38度くらいまで上がったときは一瞬驚いたけど、それも体内でウイルスと免疫力が戦っているってことだと思ったし、それが過ぎたら実際に体もすごく楽になった。一時期は味覚が薄らいで食欲がわかない分、体重は4キロくらい落ちたけど、今はすっかり戻った」
「元気はつらつ」を売り物にするオジサンとして
IWGP世界ヘビー級王者として、ぶっつけ本番のリングに鷹木はゆっくりと歩を進めた。
鷹木の思いとは別に、EVILは悪の限りを尽くす。それもバレットクラブの仲間3人の乱入という常套手段に笑みを浮かべながら。ディック東郷、高橋裕二郎に加えて、前日に悪の世界に加入したSHOも執拗にちょっかいを出してくる。一度は完全に決まっていたパイルドライバー、ラスト・オブ・ザ・ドラゴンでのフォールをセコンドの介入によって阻止された。度重なる場外戦と目まぐるしい乱入。こんなのタイトルマッチじゃない。
「EVILの手段は認めたくないが、結果を残すためということを考えると一目置かざるをえない」と鷹木は冷静だった。
「IWGP世界ヘビーは呪われている」というツイッターなどの声には違和感もあった。しかしコロナが新日本プロレスにも襲い掛かる中、「元気はつらつ」を売り物にするオジサンとしてはそれを真逆に感じていた。欠場という選択肢は皆無。「復活してやる」。次から次へと襲い掛かって来る逆境が、反発のエネルギーになった。そのエネルギーは、暴れ龍ランペイジ・ドラゴンの体に充満していた。