ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
東京五輪とメジャーで味わった“非日常”と“差” 賞金ランク1位・星野陸也(25)の現在地…銀メダル稲見に「すごいな…って」
posted2021/09/07 11:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Sankei Shimbun
一生におそらく一度しかないであろう母国での五輪出場。日の丸カラーのセットアップに身を包み、夜のスタジアムでスポットライトを浴びる経験も最初で最後に違いない。
入場行進のときには、スマートフォンで撮影しないようあらかじめお達しがあった。観覧席に陣取る来賓に向けて、手を振るようにとも言われていた。一歩ずつ進みながら、注意事項をひとつひとつ思い出していてもどうも、舞い上がっているような感覚もある。
「どっちの手を挙げるんだっけ。利き手? でも自分はボールを打つときは右利きだけど、字を書くときは左手だぞ……。うーん」
周りには、普段はあまり目にすることのない自分よりも大柄なアスリートもたくさんいる。ワクワク、ドキドキ。男子ゴルフの星野陸也は7月、開会式で非日常を存分に味わった。
「もう少しスコアを出したかった」
霞ヶ関カンツリー倶楽部での戦いは、新型コロナ禍で1年延期されたことにより、男子では日本ツアーの賞金レースをリードする25歳が松山英樹とともに出場した。
星野は大会初日、第1組で60人の選手のうち最初にスタート。“始球式”代わりのティショットにより幕を開けた第1ラウンドはイーブンパーの71。順位上の出遅れもさることながら、リーダーボードの上部に並ぶスコアに思わずうなったという。
「練習ラウンドで見る限り、良いプレーができたら、(1ラウンドで)5アンダー、6アンダーくらいが出るかなと思っていたんです。でも、実際にトップの選手たちは8アンダーとかで……」
初日から各日のベストスコアは3日目までいずれも8アンダー。最終日こそ星野は“宣言通り”の5アンダーをマークしたが、その日の最少ストロークは銀メダルを獲得したロリー・サバティーニの10アンダーだった。
最終結果は38位。ショットの調子は万全でなかったとはいえ、「緊張した部分はあったけれどもう少しスコアを出したかった。悔しい」と言った。一緒に日の丸を背負ったメンバーのプレーぶりを見ればなおさらだ。