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18歳に逆転負け…2連覇を目指す女王・大坂なおみに何があったのか?「しばらくテニスから離れて休もうと思う」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2021/09/05 17:03
連覇のかかった全米オープンは自らの心を整えるようにして臨んだはずの大会だった
父と姉との3人で始めた長い旅だ。テニスはほとんど未経験だった父がウィリアムズ家のサクセスストーリーに刺激を受け、独学で娘たちにテニスを教え始めたことは日本でも随分伝えられた。
子供の頃からバランス感覚にすぐれ、大きな才能を感じさせたのはまりのほうだったという。しかし、それぞれ14歳でデビューした姉妹のプロキャリアの道は大きく分かれ、妹はグランドスラム・チャンピオンになり、姉は自己最高が280位という成績で今年の3月に引退した。
しかし、子供の頃は姉に勝つことが一番の目標だったというなおみにとっての姉はやはり姉で、その関係性を垣間見たのは、大坂が全米オープンで初優勝した直後の東レパンパシフィック・オープンでのことだ。予選に出場したまりはその1回戦で敗れたが、妹に何かエールの言葉を、と会見で求められると「普通にやれ。それができれば誰にでも勝てる」と言って皆を笑わせた。そのぶっきらぼうな言い回しがウケたのだが、今になって思い返せば、妹をよく知るからこそのやさしく深いエールだった。
今回、ファミリーボックスにまりの姿があった。今後、この心強い姉の存在とサポートが大坂のカムバックのカギにならないだろうか。
子供じみたふるまいは“コインの裏側”にすぎない
ラケットやボールに当たった行為を「小さな子供のようだった」と恥じた大坂だが、子供じみたふるまいと驚くほどの純粋さ・素直さはコインの裏表だ。猪突猛進型の性格も含め、それはふとしたきっかけで極端に違う結末へと向かう。これまでもそうだった。
このままテニスを投げてしまう……それもありえないことではない。しかし、刺繍に込めたメッセージの続き、この家族のミラクルなストーリーの続きをもう少し見たいと私は思う。