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18歳に逆転負け…2連覇を目指す女王・大坂なおみに何があったのか?「しばらくテニスから離れて休もうと思う」 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byHiromasa Mano

posted2021/09/05 17:03

18歳に逆転負け…2連覇を目指す女王・大坂なおみに何があったのか?「しばらくテニスから離れて休もうと思う」<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

連覇のかかった全米オープンは自らの心を整えるようにして臨んだはずの大会だった

 最終セットの1ポイント目をダブルフォルトで失い、サービスダウンでのスタート。168cmのフェルナンデスは華奢な体つきで、パワーがあるわけではない。しかし、ストロークが正確で、読みの鋭さも備えていた。最大の武器は「試合の前から私が勝つと思っていた。相手が誰でもそう信じて子供の頃からやってきたから」と試合後に言い放ったメンタルだろう。

 第2ゲームでフェルナンデスのバックハンドがネットコードに当たって大坂側に落ちると、苛立つ大坂はそのボールを観客席に向かって強く打ち込み、警告をとられた。フラストレーションをためていく大坂と対照的に、序盤の固さから抜け出してリズムをつかんだフェルナンデスは、より深いショットを放ち、得意のドロップショットを生かした。ついに訪れたフェルナンデスのサービング・フォー・ザ・マッチ。勝ち気なティーンネイジャーはこの大舞台のクライマックスにも動じることなく、ラブゲームでチャンピオンを叩きのめした。

司会の合図を遮って「ちゃんと最後まで言いたいわ」

 約50分後、大坂は会見で涙をこらえて真摯に答えていたが、日本語での質問に移って1つ目、例のSNSに綴った思いに触れる質問に対し、涙で言葉を継げなくなった。確か質問は「あの気持ちはこの敗戦によって変わっていないか」というものだった。それはとてもデリケートな心の話だから、答えたくないなら、あるいは答えたくてもそれが辛いなら、一言「変わっていない」とか「わからない」で逃げればいいのだ。だが、大坂は誰に対してもきちんと向き合おうとしすぎているように見えた。

「もちろん、その思いを持ち続けたい」と言ったあと、あれこれ思いを巡らせながら「最近の私は勝ってもうれしくなくて、ほっとしているような感じで……」と話しながら涙が込み上げた。司会者が「ここでおしまいにしましょう」と促すと、「ちゃんと最後まで言いたいわ」と大坂が望んだのだが、「自分が何をしたいのかを見つけ出さないといけないところにきていると思う」と言って涙がこぼれた。再び司会者が会見終了をうながし、今度は大坂も従った。席を立つ前に、やっとのことでこう言い残し……。

「次にいつ試合ができるかわからない。しばらくテニスから離れて休もうと思う」

自分自身を見つめ直そうと「全米OP」に挑んだ

 1年前、社会正義を背負って戦った大坂が、今大会は自分自身を深く見つめ直そうとしていた。人種差別による暴力で犠牲になった黒人の名前を記したマスクではなく、今回身に着けたのは、自分の家族の名前を縫い込んだカラフルなシューズだ。シューズの外側には日の丸と『NY』のパッチとともに姉の名である『MARI』が、内側にはハイチの国旗と並んで父の名『LEONARD』が刺繍されていた。

【次ページ】 大坂カムバックの鍵は「家族の存在」

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