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「一刻も早く出たかったけど…」栗山巧38歳が“古くて小さい”旧「若獅子寮」に頑なに住み続けたワケ《2000安打の裏に怖~い話が?》
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKYODO
posted2021/09/05 17:02
9月4日の楽天戦にて、通算2000安打を達成した埼玉西武ライオンズの栗山巧
「最初は一刻も早くここを出たいと思っていたんですけどね(笑)。でも食事は美味しいし、何より気を遣わずに好きなときに好きなだけ練習できる環境は最高でしたから」
後にそう話していたのは、栗山その人。皆が寝静まる真夜中でも寮に隣接する室内練習場に薄明りを灯し、バットを振り続けていた。練習に練習を重ねて、プロ4年目にブレーク。主力となった後も、努力を惜しまず野球に向き合ってきた姿があった。あの「若獅子寮の怪談」は、そんなレジェンドの原点を伝える“伝説”の1つだったのだ。
室内練習場には、今も変わらずベテランの姿が
2018年から始まった球団施設の改修工事が進み、狭山丘陵の“獅子の穴”は姿を変えた。「若獅子寮」も最新設備に生まれ変わったが、隣接するピカピカの室内練習場には、変わらぬベテランの姿がある。今季前半戦、デーゲームの出場後にバットを振り込む栗山の姿を、何人もの若手選手が見ていた。
「たまたま自分が球団生え抜きでは初めてになりましたが、偉大な大先輩たちの背中を追ってきた結果だと思います。皆さんからこれからも応援していただけるような選手であり続けたいです」
2000安打到達の記者会見ではそんな率直なコメントを残した栗山。
黙々と、コツコツと――。実直に歩んだ先にたどり着いた金字塔だ。