甲子園の風BACK NUMBER
「雨で延びたら…」明徳・馬淵監督が嘆く“練習場の地域格差”と各校監督のホンネ〈近畿勢以外のミスが目立つプレーって?〉
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/08/27 20:00
明徳義塾・馬淵監督が言及した甲子園の“練習場の地域格差”は、気候変動の真っただ中で考えていくべきテーマなのかもしれない
チームに突出した選手はいない。長打や連打での大量得点は難しいため、馬淵監督は1点を積み重ね、僅差を制するチームづくりと采配に徹した。
今大会4試合のチーム打率は.237。安打数こそ少ないが、計24四死球に13犠打を絡めてベスト8まで進んだ。1回戦は県岐阜商に3-2で勝利。3回戦の松商学園は2-0とともに接戦を制した。また2回戦の明桜戦は、明徳義塾の野球を象徴する攻撃だった。プロ注目の風間球打に球数を投げさせて、6回でマウンドから引きずり下ろす。1試合で10四球をもぎ取り、8安打で8点を奪った。
名将・馬淵監督でも天気はコントロールできない
緻密な野球で“弱者”が“強者”に勝つ。そのために不可欠なのが、日々の練習。ただし名将・馬淵監督であっても、天気はコントロールできない。経験のない順延で生じた狂いを修正する術はなかった。
どの学校の監督も選手も、新型コロナウイルスの感染拡大や雨による順延の中で、大会が開催されていることに感謝の言葉を述べている。そして「どの学校も条件は同じ」と声をそろえる。その上で、異例の大会への葛藤も口にしている。
準々決勝で智弁和歌山に敗れた石見智翠館・末光章朗監督は「練習時間が短くてホテルに帰ったら活動できないので、バランスの難しさを感じた。うちはほとんどが寮生なので寮に比べれば快適に過ごせていたと思うが、日数が増えると、いい意味での緊張感がなくなる。体の状態も変わってくるので難しかった」と明かした。
また初戦で敗退したセンバツ準優勝の明豊・川崎絢平監督は「順延が続いて調整が難しかった。チームの持っていき方も含めて完敗だった」と述べている。
今大会で目立っているバントミス
3回戦で明徳義塾に敗れた松商学園の足立修監督は「この長丁場を耐えるには相当な精神力が必要。タフじゃないと上は狙えない」と話している。
松商学園はこの試合、送りバントを3度失敗。順延による練習、実戦不足の影響を感じさせた。
バントミスは松商学園に限らず、今大会で目立っている。
準々決勝で京都国際にサヨナラで敗れた敦賀気比も、バントの失敗が響いた。5回無死一塁で、長尾朝陽捕手がバントをファウル。その後、結果的に四球を選んだが、このファウルで右手の人差し指を痛めて、次のイニングの守備からベンチに退いた。
続く9番打者の本田克投手も走者を進められずに2ストライクと追い込まれ、バスターに切り替えたが併殺打となった。敦賀気比は7回無死一塁でも犠打を失敗し、先制点を逃している。