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大谷翔平から“甲子園唯一の三振”を奪った投手「本当の実力は分からなかった」当時のリアル…帝京高“プロ注目エース”を苦しめた花巻東打線
posted2025/07/03 11:03

2011年夏の甲子園1回戦で帝京高と対戦した大谷翔平(花巻東高)
text by

上杉純也Junya Uesugi
photograph by
Asahi Shimbun
◆◆◆
――まず最初に、初戦の対戦相手が花巻東と決まったときの石倉さんの率直な感想を聞かせてください。
石倉嵩也さん(以下、石倉) そうですね。花巻東が相手と決まったときは、すでに大谷選手は高校野球雑誌などでかなり取り上げられていたので、とにかく“すごい”っていうことだけは認識していました。だから実際にはどれほどなんだろうと。とにかく楽しみもありつつ、不安もありつつっていう感じでしたね。
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――事前に実際の映像を見たりとかはできなかったのですか?
石倉 そうですね。実際に見るどころか、映像を見て研究するっていうこともできなかったんです。だから本当にどの程度の実力なのかっていうのは分からなかったんですよ。
――大谷選手は石倉さんと同級生ですね。
石倉 そうですね。同級生に「翌年のドラフトの上位で指名されてプロ入りするくらいの凄いピッチャーがいる」ってもっぱらの評判だったんです。それが大谷でした。私もその評判を聞いて、絶対にプロに行く人なんだろうなっていうのは感じていましたし。
「花巻東打線は、ファウルで粘って…」
――対する石倉さんたちの帝京にもプロ注目のピッチャーがいました。1学年上のエース右腕・伊藤拓郎投手です。ただ、ケガの影響などもあってずっと調子が上がってこなかった感じですよね。それでも東東京大会準々決勝の修徳戦では7回参考記録ながらノーヒットノーランを達成しています。決勝の関東一戦でも9回1失点で完投しているので、復調の気配が漂っていましたよね。
石倉 東東京大会のときから拓郎さんの調子自体は良さそうだと思っていました。その上で花巻東との試合では初回に2点を先制して、ウチのペースに持ってこられたなっていうところはベンチで感じていたので。なんとなくですけど、このまま勝ち切るなって初回を見て思っていたんですね。でも、実際に花巻東の攻撃になって、ちょっと捉えられるというか、これマズイな、みたいな。もしかしたら出番があるかもしれないというのは、早い段階で思ってはいましたね。
――花巻東打線はかなりねちっこかったというか。伊藤投手も苦しんで投げているなっていう印象を受けました。石倉さんだけではなくてベンチの中も、何かそんな雰囲気だったんでしょうか?