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「逃げ馬&前走1番人気◎」を証明した女傑…500万の抽選馬“イソノルーブル”がオークスで高額馬を打ち破るまで
text by
小川隆行Takayuki Ogawa
photograph byフォトチェスナット
posted2021/09/04 17:00
1番人気の桜花賞を逃げて5着に敗れ、続くオークスを4番人気で勝った女傑・イソノルーブル
この年はイソノルーブルを筆頭にノーザンドライバー(デイリー杯3歳S&ペガサスS優勝)、スカーレットブーケ(札幌3歳S&クイーンC優勝)、シスタートウショウ(3戦無敗・チューリップ賞優勝)、ミルフォードスルー(函館3歳S&シンザン記念優勝)の「5強」と称された。ノーザンドライバーとスカーレットブーケ、ミルフォードスルーは牡馬相手の重賞を制しており「オークス史上最高レベル」とも称されたが、その中でもイソノルーブルの逃げ脚は際立っており、ラジオたんぱ3歳牝馬Sではスカーレットブーケとミルフォードスルーを破っていた。市場取引価格わずか500万円の抽選馬が高馬を破る、という構図も一般ファンを魅了した要因であり、報知杯4歳牝馬特別から手綱を握った、甘いマスクの松永幹夫(現調教師)とのコンビも人気に拍車をかけた。
桜花賞1番人気…しかし、まさかの事態に
しかし、阪神競馬場の改修工事に伴い開催された京都競馬場は、レース直前に異様な雰囲気に包まれた。イソノルーブルが右前脚の蹄鉄を落鉄してしまったのだ。
しかも、何が起きたかわからない(であろう)イソノルーブルは興奮状態に陥り、待機所で蹄鉄の打ち直しをしようと右前脚に触れる装蹄師を拒否しまくり、その様子を松永騎手が心配そうに見つめている。発走予定時刻から10分経っても各馬の輪のりは続いたままだ。
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イソノルーブルからの馬券を握りしめていた私は、この状況をみて「いったいどうなるんだ」と感じていたが、15分後、落鉄したまま発走するという事態に陥った。ただ場内アナウンスはされず、私を含めたファンは落鉄でレースに挑むなど知らされていない。
人気薄ならまだしも1番人気である。2番手を進んだイソノルーブルは5着に敗れた。勝ったシスタートウショウから遅れること9馬身差の大敗である。