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順延に不戦勝、アクシデント続きで「ふわふわしていた」智弁和歌山が“ぶっつけ本番”で見せた底力…異例の調整のウラ側とは?

posted2021/08/25 17:04

 
順延に不戦勝、アクシデント続きで「ふわふわしていた」智弁和歌山が“ぶっつけ本番”で見せた底力…異例の調整のウラ側とは?<Number Web> photograph by KYODO

夏の甲子園、8月24日の智弁和歌山-高松商にて勝利した智弁和歌山ナイン。

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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 それは、言い訳ではなく、心の叫びのように聞こえた。

 悪天候による順延日数は過去最多の7日。各校の監督たちは調整に腐心していた。

 本来なら8月14日に初戦を迎えていたはずの敦賀気比は、20日に日本文理と対戦した。試合は8-6と打撃戦を制したものの、監督の東哲平は「不安はありました」と、正直に胸の内を明かした。

「予選が終わってから甲子園の初戦まで、1カ月も試合をしなかったのは初めての経験だったので、調整が難しかったです。ですから、『今日はどんな形でも勝つ』という姿勢で試合に臨みました」

 その翌日、抽選会の時点では49代表で最後の登場となるはずだった浦和学院の森士監督も、緊張の糸が張り詰めていた日々を振り返るように言っていた。

「関西に入ってから2週間ほど時間があり練習はしていましたが、天候不良で準備もままならないと言いますか。ゲームから離れていたことによって、1球の判断、決断力に影響が出てしまったのかな、と」

 優勝候補の一角にも挙げられていた浦和学院は、初戦で日大山形に3-4の僅差で敗れた。「甲子園で1勝する厳しさを改めて思い知らされました」と、この大会を最後に退任する森はしかし、潔く負けを認めた。

 東と森はもちろん、雨による順延のため長い間、初戦を待たされた監督たちは、「でも、相手も条件は同じ」と口を揃えていた。

 確かにその通りだ。唯一、智弁和歌山を除いては。

順延に不戦勝…“不利な条件”が揃ったなかで

 雨天による順延。さらに、初戦の相手である宮崎商が、選手に新型コロナウイルスの陽性者が出たことで出場を辞退した。2回戦から登場するはずだった智弁和歌山は不戦勝となり、初陣は24日まで待たされるはめとなった。相手の高松商は作新学院に勝利していることから、「条件は同じ」でないどころか不利な条件が揃ってしまったとも表現できる。

「甲子園で試合をすることは簡単じゃない。トーナメントを準備してくださる運営の方々、その他、大会を支えてくださる人たちの気持ちを考えれば、察するに余りある」

【次ページ】 「最初はふわふわした気持ちでしたけど…」

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