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“組んだ瞬間から息ぴったり”渡辺勇大・東野有紗はなぜ3年前から急成長できたのか「勇大君はこんなことを思っていたのかと…」《混合ダブルス銅》
posted2021/08/24 11:05
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
バンクーバー、ソチと2つのオリンピックに出場するなどフィギュアスケート・アイスダンスで長く日本を牽引したキャシー・リードの印象深い言葉がある。
「最初の感覚ってすごく大切で、そこでずっとやっていけるかが分かることって、あると思います」
アイスダンスにおいてパートナーの存在は重要で、技術もさることながらコミュニケーションであったり性格であったり、相性の合う相手と出会えるかが大切になってくる。信頼を築ける相手と表せるかもしれない。その見極めは出会った瞬間につかめることがある、と言う。
東京五輪のバドミントン・混合ダブルスで銅メダルを獲得した渡辺勇大、東野有紗は、リードの言葉を思い起こさせた。
多くの選手が活躍した大会にあって、2人は鮮烈な印象を観る者に与えた。試合中、ときに劣勢になりながらも言葉を交わし立て直していく様子をはじめ、1つの呼吸となって抜群のコンビネーションを見せたプレーが大会を終えてなお、余韻を残している。
「この年齢でペア10年目というのは世界を見ても少ない」
ともに通っていた富岡第一中学校のとき、1つ後輩の渡辺と先輩の東野は初めてペアを組んだ。そのときの感覚を忘れていない。
「最初から息が合っていました。最初はあまり話したことがなくて試合だけ、という感じでしたが、それでも成績が残せて」(渡辺)
「組んだ瞬間から、練習していなくても息が合いましたし、コンビネーションもよくて、話したことがぜんぜんなかったけれどミックスを組んだときはすごく楽しくて。あの瞬間は今でも忘れられないです」(東野)
以来、ペアとしての時間を積み重ねてきたことは広く知られるようになった。先に東野が高校を卒業して日本ユニシスに入社。渡辺が進路を選択する時期が来ると、東野が何度もメッセージを送るなどして勧誘し、渡辺がユニシスに入社を決めたことも象徴的なエピソードだ。