甲子園の風BACK NUMBER
大谷翔平や坂本勇人らの影響が高校野球にも?「2番打者」に監督がバントのサインを出さなかった“2つの理由”〈青森・弘前学院聖愛〉
posted2021/08/21 20:00
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Getty Images/Kyodo News/JMPA
高校野球の“定石”からすれば、送りバントの場面だ。
2-2と同点の6回表、無死一塁。打席には、弘前学院聖愛の2番・町田修平が入った。初球、石見智翠館の山崎琢磨が投じた外角高めの直球を迷わずスイングした。打球は伸びずに左飛。後続も走者を還せなかった。
身長176センチ、体重84キロの町田。原田一範監督は「うちの打線で一番いい打者」と信頼を寄せる。青森大会では6本の安打を記録し、本塁打を含む4本が長打だった。2番打者で起用され、犠打が1つで四死球はゼロ。八戸学院光星や青森山田を破って出場を決めた甲子園でも、スタイルを貫いた。
“どっしりとした”2番打者が増えてきている
バントの構えで揺さぶったり、ファウルで粘ったり。
2番打者は小柄な選手が多く、「小技」や「つなぎ」のイメージが長らく続いてきた。しかし、2番打者に求められる役割はメジャーリーグや日本のプロ野球で変化し、その波は高校野球にも押し寄せている。
この日の甲子園で2番打者のスタメンを見ると、新田・入山雄太は身長181センチ、体重77キロ。日本航空・森迅央が176センチ、76キロで、横浜・安達大和は179センチ、80キロと、かつての2番打者の姿とは重ならない。
今大会で、その変化を最も感じさせるのは、高松商の浅野翔吾だ。170センチ、83キロのどっしりとした体格。上段にバットを構えた姿は「主砲」の貫禄であふれている。香川大会では打率.412、2本塁打で、チームトップの10打点を叩き出している。
甲子園の初戦となった作新学院戦でも2安打1打点。警戒する相手投手から四球を2つ選んで、全5打席で4度出塁し、3度ホームを踏んだ。長尾健司監督も「浅野はこのチームで一番いい打者。相手バッテリーは2番にいるのを嫌がっていた」と勝因の1つに挙げた。
2番打者に長打を狙えるタイプを置く――ここ近年の野球のトレンドである。
最近は1番での起用が続いているが、エンゼルス・大谷翔平の活躍によって、長打が期待できる打者を2番を務めるスタイルが再注目されている。