松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
パラ水泳転向直後に日本新記録!辻内彩野のモチベーション「高校生の頃の自分に勝つ」に修造が見たアスリート魂
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byAFLO
posted2021/08/24 17:02
2021年の日本パラ水泳選手権に出場した辻内彩野選手。怪我をして一度水泳を諦める前の自分のタイムが目標
松岡:障害者手帳をもらうというのは、どういう捉え方でしたか?
辻内:身分証明書にもなるし、これからもっと目が悪くなるのが分かっているんだったらもらっておこうかなという感覚でした。自分が障害者になることに対しては特に何も思いませんでした。難病だと分かった時点で自分は見えている人達とは違うんだと受け入れた感じだったので。
松岡:パラ水泳に転向することも受け入れられたのでしょうか?
辻内:そうですね。リオパラリンピックに出た森下さんからパラ水泳チームの話を聞いていて、なんか楽しそうだなって思ってたし。あと障害に対しても、自分の通っていた小学校に特別学級があって身近に障害のある子がいたので、マイナスイメージがなかったというのもあると思います。
最初はピンと来なかったパラリンピック
松岡:彩野さんは、もともと水泳競技で高いレベルにありました。パラ水泳の世界に入った時点で、「よし、東京パラリンピックを目指してみよう」となったんじゃないですか?
辻内:パラリンピックは全然目標にしていなくて、とりあえずレースがしたいという、ただそれだけでしたね。何しろ右も左も分からない状態だから、視覚障害クラスの選手にいろいろ聞いて、競技をしていく中で高校時代の自分の記録を超えられたらいいなという気持ちでしかなくて。だから強化指定選手になった頃は、「私でいいのかな?」ってちょくちょく自分の中で考えていました。
松岡:それは他の選手よりも、競技に対する本気度が低いという感じでしょうか?
辻内:他の強化指定選手にはパラリンピックに出たいという明確な夢があるのに、私一人だけ「パラリンピック?」みたいな考え方だったので、ここにいていいのかなという感じです。まだ、ちゃんとパラリンピックに向き合っていない状態でしたね。