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21歳田中希実、19歳三浦龍司、20歳廣中璃梨佳…なぜ東京五輪で“陸上界のZ世代”は躍進できたのか?
posted2021/08/25 11:03
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph by
Getty Images
東京五輪で日本はメダルラッシュに沸いた。それだけに、陸上界の活躍は少しインパクトに欠けた部分があっただろう。それでも日本勢は今回2人のメダリストを含む9人の入賞者(8位以内)を出している。そのうち男子マラソンの大迫傑(Nike)を除く8人全員が25歳以下。1996年以降に生まれた「Z世代」だった。
このなかで2019年ドーハ世界選手権の男子20km競歩で金メダルを獲得した山西利和(愛知製鋼)、同6位の池田向希(旭化成)、同選手権の男子走り幅跳びで8位に入った橋岡優輝(富士通)はすでに世界大会の実績があった。男子50km競歩の川野将虎(旭化成)と女子マラソンの一山麻緒(ワコール)も東京五輪が通常開催されていたとしても、今回のような活躍ができた可能性は高い。
「東京五輪の1年延期」で急成長した3選手
一方で、男子3000m障害の三浦龍司(順大)、女子10000mの廣中璃梨佳(日本郵政グループ)、女子1500mの田中希実(豊田自動織機TC)については、東京五輪が1年延期していなければ今回のような活躍は望めなかっただろう。
三浦は昨年7月に8分19秒37(当時・日本歴代2位)をマーク。五輪参加標準記録(8分22秒00)を上回ったが、国内トップレベルのレース経験は決して多くはなく、ラストのスピードも十分とは言えなかった。廣中は昨年9月に5000mを14分59秒37で走破しており、5000mは東京五輪の出場を狙える位置にいた。しかし、10000mは未経験だった。田中は昨年8月に1500mで4分05秒27の日本記録(当時)を樹立したが、7月までのベストは4分08秒68。五輪参加標準記録(4分04秒20)に届いておらず、ワールドランキングでの出場も難しい状況だった。
それがわずか1年で急成長。3人は東京五輪で衝撃的な走りを連発した。