スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
サマートレードとジャイアンツの堅調。カブスの主力大放出が影響をもたらすナ・リーグ西地区優勝争いの行方
posted2021/08/14 06:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
サマートレードの締切から10日以上が経った。人々の眼がオリンピックに向かっていた間も、MLBはめまぐるしい動きを止めなかった。当然といえば当然だが、やはり生き馬の眼を抜く世界だ。
トレードの締切は、米国東部時間の7月31日午後4時だった。そのわずか10分前に、大物の移籍が電撃的に決まっている。カブスの万能選手クリス・ブライアントが、ナ・リーグ西地区で首位を走るジャイアンツにトレードされたのだ。
今年のカブスは、突如、最大の売り手と化した印象を与える。
6月末までは勝率5割を維持し、プレーオフ進出も不可能ではないと思わせていたのに(といっても、本当に好調だったのは6月中旬までだ)、その後は大きく崩れて、7月などは9勝16敗。いまにして思えば、7月15日に、ジョク・ピーダーソン外野手がブレーヴスにトレードされたときから「解体」は始まっていたようだ。
7月29日には、アントニー・リゾ内野手がヤンキースにトレードされた。30日には、ハビエル・バエス内野手がメッツへ、クレイグ・キンブレル投手がホワイトソックスへトレードされた。オールスター級選手の、矢継ぎ早の放出だ。
これで、2016年にワールドシリーズを制覇したときのメンバーは、ほとんどいなくなってしまった。めぼしい野手で残っているのは、ウィルソン・コントレラス捕手とジェイソン・ヘイワード外野手ぐらいだ。
ただ、ビッグネームと交換で入ってきた若手に有望な選手が多い。キンブレルと交換されたニック・マドリガル内野手、バエスと交換されたピート・クロウ・アームストロング外野手、リゾと交換されたケヴィン・アルカンタラ外野手などは、いずれも将来が嘱望されている。3年後、5年後のカブスが、ふたたび反撃の狼煙を上げることを期待しよう。
ナ・リーグ西地区首位ジャイアンツの思惑
買い手の側で注目したいのは、なんといってもジャイアンツだ。
今季のジャイアンツは、本当にしぶとい。春先に首位を突っ走っていたときは、いまに疲れが出るだろうと思ったのだが、その安定した戦いぶりは、まったく衰えを見せない。4月=16勝10敗、5月=18勝10敗、6月=16勝9敗、7月=15勝10敗と、測ったような堅実さを見せたあと、8月は10日現在、7勝2敗のハイペースでナ・リーグ西地区の首位をキープしている。現在のトータルは、72勝41敗。