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じつは…10000m新谷仁美はスパイクすら履けない状態だった<3月のTBSオールスター感謝祭で見せた素晴らしいタイム>
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byTakeshi Nishimoto
posted2021/08/06 20:01
東京五輪8月7日に行われる陸上女子10000mに出場する新谷仁美
西本 本来ならスピード持久力をつけたい時期なんですが、コロナ禍ということで、ジョグもやらないほど、全く走らなくなるんです。本当の「ステイホーム」です。それで横田さんも悩んで、北海道で行われるホクレンディスタンスに出場するために、短い距離なら走ってくれるのではないかと、7月に1500mに出てくるんです。
森岡 全然試合に出てこないから、どうしてるのかなと思っていました(笑)。でもそれだけ間が空いていたら普通は走れないのに東京選手権で1位。しっかり練習していたのかなと安心していたら、9月の全日本実業団10000mはいきなり棄権でしょ? やっぱり「調子が悪いのかな」と心配すると、2日後の5000mは14分55秒。もう意味がわからない(笑)。
西本 日本歴代2位のタイムですもんね。
森岡 しかも暑くて、全然走れない熊谷での記録ですからね。この時は2450mから新谷が引っ張って、前半の2500mが7分30秒、後半が7分25秒。最後の2000mが5分54秒ですから「あ、練習してたんだ」って思いました(笑)。
衝撃のレース「3位まで周回遅れ」
西本 10000mのための練習ではなくて、1500mをやったことで瓢箪から駒。スピードの切れ味が出てきたことで、5000mに活きたらしいです。そして全日本実業団女子駅伝です。テレビ中継もあって、区間記録を1分以上更新、10000mの通過が日本新ペースだったというのが大きく報じられました。
森岡 あれは強かったよね。1kmも行かないうちに前に追いついて。実はレース前、横田から練習メニューを聞いていたんです。この年の2月に5000mを15分10秒で走っていた選手のメニューを教えていたんですが、横田は新谷にそれを2セットやらせたと言うんですよ。「それは強いわ」と驚きました。ただ、この駅伝の約2週間後に日本選手権というスケジュールは「大丈夫か?」と思いましたが、あの日本新です。
西本 3位の選手まで周回遅れにした、衝撃のレースでしたね。
森岡 最初の3kmが9分5秒で、しかもまだ余裕があった。東京五輪であの走りを再現できたらチャンスだと思ったのですが、新谷はそうは素直にはいかない(笑)。
西本 東京五輪イヤーの2021年も最初は雲隠れしています。
<2021年>
1月24日 北九州女子駅伝 大会中止
3月27日 オールスター感謝祭 3.5km 11分06秒
5月3日 日本選手権 10000m DNS
5月9日 READY STEADY TOKYO 5000m 15分18秒21
6月6日 デンカ アスレチックス チャレンジカップ 1500m DNS
6月26日放送分 炎の体育会T V 1.5km 5分47秒 +1km 3分01秒53
6月27日 日本選手権 5000m 15分13秒73
7月17日 ホクレン・ディスタンス・チャレンジ千歳 3000m 9分11秒19
3000m 9分09秒27
1500m 4分28秒03
「オールスター感謝祭の走りはいいと思った」
西本 後にNHKのドキュメンタリーでも報じられるのですが、日本記録を出した12月の日本選手権から、3月のオールスター感謝祭までは故障をしていたんです。スパイクすら履けていなかった。