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子役の芸能活動も体操のため 村上茉愛が女子個人初のメダルを獲るまで「リオから昨日まで泣きつくしたというくらい泣きました」
posted2021/08/03 17:03
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
ついに、歴史の扉を開いた。
8月2日、体操の女子種目別決勝のゆかで、村上茉愛が銅メダルを獲得した。
体操女子でのメダルは、1964年東京五輪の団体総合で銅メダルを獲得して以来、57年ぶりのこと。個人種目では史上初である。
本命だったバイルス(アメリカ)は不在の中、出場する8人の予選での得点は最上位から最下位まで0.233点と僅差におさまる。表彰台の争いは混戦が予想された。
ミスが許されない状況の中、村上は6番目に登場する。
その演技は、見事、のひとことだった。
「リオから昨日まで泣きつくしたというくらい泣きました」
鍵を握るのは最初にあった、H難度のシリバス(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)。
世界で数名しかできない大技だ。村上はぴたりと着地を止める。
そのあとも着地をぴたり、ぴたりと止め、スピードにあふれる演技を披露する。得点は14.166。予選の13.933、団体決勝の14.066を上回るスコアをたたきだした。演技終了時点でメルニコワ(ROC=ロシアオリンピック委員会)と3位タイ。
その後、残る2名が上回ることはなく、村上の銅メダルが確定した。
「今までの世界選手権で2回メダルをもらっていますが、いちばん重いです」
この日は入場から、どこか突き抜けたような表情をしていた村上は、演技の最中も、終わってからも晴れやかだった。
「リオから昨日まで泣きつくしたというくらい泣きました。『悔し涙はもう流したくない』と思ったので、今日は笑おう、楽しもうと思って臨みました」
「(演技の)1分半が終わってほしくないと思って、笑顔になれました」