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今や最強FWサラーを「いつもどおり」で完封も 徳永悠平が語ったロンドン五輪の教訓「メダルが懸かる最後のところはまだ…」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byFIFA via Getty Images
posted2021/08/02 20:00
ロンドン五輪のエジプト戦では、今や世界最高のストライカーの1人であるサラー(左)を抑え、3-0の勝利に貢献した徳永
率先してやるべきことをやる
「試合の入りからみんな集中できていて、硬くもない。これならやれるなって戦いながら思っていました。ボールこそ持たれていましたけど、そこまで守っている感じもしなかったですね。
スピードがある(永井)謙佑を、相手がかなり嫌がっていたので“前に残っておけ”と。おそらくスペインは謙佑のこと、あまり研究してなかったと思いますよ」
人々はサプライズと感じていても、自分たちにとってはそこまでではない。
試合が終わっても気持ちが浮つくこともない。ひとしきり喜びに浸ったら、彼は72時間後の次戦、モロッコ戦を見据えた。中2日で試合が続いていくため、クールダウン、アイシングを含めたケアに充てて回復を早めることを意識する。
率先して範を示すというより、率先してやるべきことをやる。スペイン戦の勝利をさっさと過去にして、次を戦うためのコンディションの準備に入ると周りも続いた。イギリスにいても他の競技をテレビで観ることもしない。交代浴、炭酸泉、マッサージ、睡眠……コンディションを早く戻していくことしか頭になかった。
対面には20歳、若き日のモハメド・サラー
スペインに勝った勢いのまま、チームはグループ1位で決勝トーナメントに進出する。準々決勝では先のトゥーロン国際大会で敗れていたエジプトとの対戦が決まった。
徳永の対面には20歳、若き日のモハメド・サラー。あまりのスピードに面食らったものの、チームは3-0と快勝。この日も堅守速攻がはまった。
そして史上初の決勝進出を懸けて臨んだメキシコとの再戦を迎える。
8万人を飲みこんだウェンブリースタジアム。だがメキシコはボールを保持するスタイルを変え、ディフェンシブな戦いを選択してきた。
日本は先制しながらも、疲れからかボールを奪ってもすぐに失ってしまう。コーナーキックから今大会初めて失点を喫し、後半に入って勝ち越しを許した。最後は引き離されて試合を終えている。
メキシコの強さには徳永も素直に脱帽した。彼らは結局、金メダルを手にする。
「もう1回やっても勝てないだろうなって思いました。先制はしたけど、力負け。メキシコは誰もさぼらないし、洗練されていました。大人のサッカーっていう感じでしたね。悔しいけど、技術、体力、オーガナイズどれも日本を上回っていた」