濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
舞台演出&脚本に映画主演も…“女優によるプロレス団体”アクトレスガールズの選手たちは「リングで可愛くなっていく」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/08/04 17:00
アクトレスガールズの大会ではオープニングのダンスも恒例。8月13日の後楽園ホール大会では、どんなドラマが生まれるか
カケミクにはもどかしさもあったと、受けて立つ本間は言う。2人とも、あまり自分の気持ちを主張するタイプではなかった。だが今は違う。自信も悔しさもそのまま出せる。それがプロレスラーとしての強みなのだと、本間は知っている。
「翔にも未来にも負けたことがあるし、2人が挑戦してくるのは脅威ですね。絶対負けないですけど。でも頼もしくなったなという嬉しさもありますね、正直」
闘う相手は単なる“敵”ではない。一緒に団体を作り、守り、育てていく仲間でもある。その感覚を、アクトレスガールズからは特に強く感じる。
本間、高瀬の不在が残った選手の自覚を強めた
カケミクが挑戦表明した直後、本間はヒザの靭帯を負傷して欠場を余儀なくされた。7月のBeginning大会にも出られなかった。後輩たちの試合をリングサイドで見守るのは、ただただ苦しかったし悔しかった。リングに上がる選手たちの頑張りを見て、申し訳ないという言葉を使うのもおこがましいと感じたそうだ。復帰を決めた今も、その時を振り返るだけで涙が出てしまう。
同じ時期に、前シングル王者の高瀬みゆきもヒジのケガで欠場に。トップ2人を欠く状況が、残った選手たちの自覚を強めたということもあるだろう。
「私たちがやらなきゃいけない」
それはColor'sの清水ひかりも感じていたことだ。高瀬、関口、青野と同じ2017年デビュー。シングル5番勝負を敢行中で、その最終戦として8.13後楽園でSAKIのシングル王座に挑戦することになった。チャンピオンからの指名だ。
他団体でデビューしたSAKIのキャリアはアクトレスガールズの歴史よりも長い。入団すると実力的にも精神的にもColor'sの支柱になった。Color'sはBeginningから“枝分かれ”したイメージがあるから、どうしても下に見られがちだ。アクトレスガールズの大会イコールBeginningの大会、そんな見られ方。SAKIからすると、2ブランド制自体が浸透していないと感じる時もある。
そんな状況を変えたくて、SAKIはタイトルに挑み、勝ってColor'sにベルトを持ち帰った。すぐにColor's内で挑戦者決定トーナメントを開催。選手たちは一気に活気付いた。
Color'sという名称には、キャリアの浅い、まだ色のついていない選手たちがそれぞれの色をつけていくという意味があった。設立から2年半経って、選手それぞれの個性、色鮮やかさはBeginningにまったく引けを取らなくなった。SAKIにとっては、それが何よりも嬉しい。