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《29年ぶり五輪8強》男子バレー超新星・高橋藍(19)は石川祐希と何が違う? 恩師も成長に驚き「あれはえぐい」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano
posted2021/08/02 11:03
5月の中国戦では初めての国際舞台とは思えない躍動を見せていた高橋藍(中央)。その期待通り、東京五輪の舞台でも大きな飛躍を遂げる予感を漂わせている
1本目は11-11と同点で迎えた中盤、ラリーを制したレフトからのスパイクだ。
高橋同様、この国際親善試合が代表デビュー戦となったアウトサイドヒッターの大塚達宣(早稲田大学)がレシーブしたボールを、西田有志(ジェイテクトSTINGS)がコート後方からアンダーで対角線上の高橋に高くトスを上げた。
助走も十分ではない上に、前方には2枚の高いブロックが並ぶ。決して簡単ではない状況で高橋はブロッカーの横を抜くクロススパイクを放った。12点目を叩き出したこの1本を中垣内祐一監督は「まさに彼の持ち味」と称した。
「高いボールから速いボールまで、彼はヒットする能力が非常に高い。体勢を崩したり、十分助走を取れなくてもヒットすることができる選手です。(初戦で決まった)ストレートのブロックタッチを取るスパイクは中国に読まれ、昨日ほど決まりませんでしたが、そうなっても臆することなくクロスへ打ち込む。19歳であそこまでプレーできる選手というのはなかなかいないのではないでしょうか」
東山高・松永コーチも「あれはえぐい」
2本目はその直後、13-12で日本が1点リードした場面だった。
中国のエース張景胤(ちょう・けいいん)が放ったスパイクを高橋自らレシーブ。高く上がったボールはセッターではなく、リベロの小川智大(ウルフドックス名古屋)がセット。西田も攻撃準備に入っていたが、小川はあえて自身に近い場所にいた高橋に上げた。高橋は後方からの難しいボールに身体を回転させながらスペースをつくり、ほぼ助走のない状況から肩を外旋させ、インナーに打ち込む。相手のレシーブしたボールはアウトになり、日本が14点目を挙げた。
うわ、とも、ぬお、とも言葉にならない声が漏れたこの1本。テレビで観戦しながら「あれはえぐい」と感嘆の声を上げたのは、高橋を指導してきた東山高の松永理生コーチだった。
「苦しい状況からでも打つために、スパイカーがいかに自分のスペースをつくるか。もともと藍はストレート打ちが得意でしたが、クロスにしっかり叩けるように、スパイカーとブロッカーが台に上がり、お互いノージャンプでミットをつけたブロッカーを避けるようにインナーへ打つ練習もしてきた。その成果が、まさにあの1本で体現されていました」