甲子園の風BACK NUMBER
《高校野球》米子松蔭・ツイートした主将に聞く“140文字に込めた思い”…辞退から一転、“逆転サヨナラ勝ち”のウラ側
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byToshihide Ishikura
posted2021/07/31 11:02
自らの意志でツイートした米子松蔭高校の主将・西村虎之助(3年)。甲子園出場の夢は果たせなかったが、最後の夏をグラウンドで終えることができた
西村主将のツイートは、境高の井上翔太主将もリツイートして拡散していた。それを知っていた西村主将は試合当日、メンバー交換の際に「ありがとう」と感謝の思いを伝えた。
すべての人々への感謝を胸に、米子松蔭高は全力で戦った。
境高との試合は、0-2とリードされて迎えた9回裏に3点を奪って逆転サヨナラ勝ちし、大きな話題を集めた。だが2日後の八頭(やず)高との準々決勝も、2回までに0-4とされる苦戦。その後は乱打戦となり、西村主将の2点本塁打などで10-8としたが、8回から登板していた西村主将が「最後の最後に甘いところが出て、力んでしまった」という9回表に3点を奪われ、10-11と逆転されてしまう。
9回裏、先頭打者の西村主将は初球を思い切り振り抜いたが、センターフライ。米子松蔭高はランナー1人を出すも無得点に終わり、甲子園出場の夢はついえた。
球場では笑顔も見せていた西村主将だが、学校に戻ると涙があふれてきた。「米子松蔭に来て、野球の技術はもちろんですが、礼儀、あいさつなど、たくさんのことを学ぶことができました」と振り返る。卒業後も大学で野球を続けるつもりだ。試合後、母は「いままでお疲れ様。次に向けて、また頑張ろうね」と息子をねぎらった。
グラウンドで終えた高校野球
その後の鳥取大会の行方は、結果しか知らない。「やっぱり甲子園に行けなかった悔しさがこみ上げてくるので、見ないようにしていた」という。
それでも、一度は閉ざされた扉が、多くの人々の力で再び開かれた。塩塚監督は「学校関係者、県高野連の方々、境高校の皆さん、声を上げてくださった日本中の人々に、心から感謝しています」と語る。スマホでチームの危機を救うのに一役買った西村主将も、周囲への感謝を繰り返した。
「甲子園に出て恩返しをするという目標は達成できませんでした。でも校長先生や教頭先生、県高野連や境高校の方々、日本中の皆さんが動いてくれたおかげで、僕たちはグラウンドで高校野球を終えることができました。感謝しかありません。本当にありがとうございました」
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