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《本日決着》「リオよりは強い自分がいる」柔道60kg級、高藤直寿は5年越しのリベンジで日本男子金1号を狙う
posted2021/07/24 06:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
「悔いしかありません」
それまでにないほど厳しい表情で、涙を浮かべて放ったひとことから5年、待ちに待ったリベンジの日を迎えた。
7月24日、柔道の初陣をきって登場する男子60kg級、高藤直寿は、2016年リオデジャネイロ五輪の悔しさを忘れたことがない――。
「必ず金メダルを獲ります」
そう誓って臨んだ大舞台だった。その前のロンドン五輪で日本男子は金メダルなしに終わり、大会後は批判にさらされた。それを知るからこそ、「自分の結果で、続く選手たちも変わってきます」と、必勝を期した。
「絶好調でした」と振り返るように、初戦となった2回戦で反則勝ちをおさめると、3回戦では開始17秒、内股で一本勝ち。見た目にも、言葉の通り好調に映った。だが、続く準々決勝で一本負けを喫する。
「慎重さとのバランスがかみ合っていませんでした」
好調ゆえに、攻めに比重がかかり過ぎたのを悔いた。
その後の敗者復活戦と3位決定戦で勝利し銅メダル。ただ、望んだ色ではなかった。
好調がゆえ背負い込んだプレッシャー
試合を終えて、感じることもあった。直接の敗因は好調さから来た油断であったかもしれない。でもよくよく考えれば別な理由があった。
「オリンピックをすごい怖いところだと思ってしまいました」
ロンドンでの柔道日本男子の雪辱をも果たそうという思いも加わり、大舞台のプレッシャーにのまれていた。
あれから5年、肩書としてついて回るのは銅メダリスト。金メダルを手にした選手とでは認知度、注目度が異なることを感じて過ごしてきた。
今度こそ勝ちたいと東京を目指した。2017、2018年世界選手権を連覇。2019年世界選手権は5位にとどまったが、同年のグランドスラム・大阪を制し、年明けての国際大会も優勝。代表に選出されるに至った。