濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「性格悪いですかね?」ぱんちゃん璃奈が“美女アスリート”からトップファイターに変貌の11連勝! ピンチの場面で“喜んだワケ”とは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/07/23 11:01
7月18日のsasori戦に勝利し、無傷のデビュー11連勝を飾ったぱんちゃん璃奈。この勢いはどこまで続くか?
さすがに今回は負けるだろう、ボコボコにされればいい。SNSでそんな言葉を目にするたびに燃えた。応援してくれる人たちに報いたいというだけではない。自分を冷ややかな目で見る者たちに「(勝っちゃって)ごめんね」と言って笑ってやりたいという気持ちもあったとぱんちゃんは振り返る。
「性格悪いですかね?」
いや、それはファイターに必須の負けん気だろう。
試合が始まってまず感じたのは、ぱんちゃんのスピードだ。右の蹴りからつなげる右ストレートが速い。本人もそれは感じた、というより打っていて自分でも驚いたそうだ。
「速いなっていうのはアップの時に感じました。練習では(疲労で)体が重くて分からなかったんですけど」
所属ジムSTRUGGLEの鈴木秀明会長からは、練習中も「試合になったら(速いパンチが)出るから」と言われていた。その通りだった。
安全な闘いではなく、より強さを印象づける闘い方を選んだ
右が何度も当たる。もともと前蹴りが得意だから“突進型”のsasoriに勝つには蹴りで突き放し、離れた間合いをキープするのが最善だろう。だがぱんちゃんは、練習で力を入れているパンチを軸に据えた。安全な闘いではなく、より強さを印象づける闘い方を選んだと言っていい。
「長い距離のパンチを練習してきたので、当たれば(懐に)入らせないこともできるなと。1ラウンドは私の右で思った以上に(sasoriの前進を)止めることができました」
ただ、そこでペースを掴んだとまでは言えなかった。ぱんちゃん曰く、sasoriは「試合が進むにつれてギアを上げてくる選手」だ。1ラウンドを終えてコーナーに戻ると、セコンドの鈴木会長も「次のラウンドから向こうも来るよ」と予告する。これも、その通りだった。
笑いながら前に出てパンチを強振するsasori。ぱんちゃんは真っ向勝負を仕掛けたから、反撃も真っ向から食らうことになった。2ラウンドはsasoriが取った。ここまでおそらく同ポイント。勝負は最終3ラウンドで決まる。
「試合を楽しむ余裕はなかった。だから勝てた」
ここでぱんちゃんが踏ん張った。リボンと一緒に編み込んだ髪と「ギャップがありすぎましたね(笑)」という必死の形相でパンチを繰り出す。得意の前蹴りも効果的だった。さらに突っ込んでくるsasoriを押し返してのハイキック。つまりは総力戦だ。距離が詰まればヒザの連打がある。
前に出ることしか知らないsasoriを下がらせて、判定2-0。僅差の勝利だったが「今回はそれでも嬉しいです」。自分の力が出せずに僅差になってしまったのではなく、力を出し切って“僅差をものにした”からだ。試合を終えて、やはり実力ではsasoriのほうが上だと思うとぱんちゃんは言う。
それでも勝てたのはなぜか。