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《志半ばで倒れた仲間に捧げたEURO優勝》視聴占拠率は83.6%! イタリア53年ぶりの熱狂を生んだアッズーリの“家族のような絆” 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/07/19 11:01

《志半ばで倒れた仲間に捧げたEURO優勝》視聴占拠率は83.6%! イタリア53年ぶりの熱狂を生んだアッズーリの“家族のような絆”<Number Web> photograph by Getty Images

53年ぶりの欧州王者に輝いたイタリア。その熱狂はしばらく収まりそうにない

34戦無敗のチームは文字通りイタリア全国の代表

 マンチーニは、ウェンブリーでの決勝戦前にもこれまでの代表監督とは異なる選手掌握術を見せている。

 スタメン発表の際、左サイドバックにあえて「スピナ(ッツォーラ)」と告げ、選手たちの反応を確かめた。もちろん代役DFエメルソンをフォローしつつ、先発全員の名を読み上げると静かに続けた。

「私から言うことはなにもない。皆、自分たちが何者であるか、何をやるべきかはわかっているはずだ。今夜、我々の運命を決めるのは対戦相手でもレフェリーでもない。自分たち自身だ」

 そして、このチーム不変のスローガンを告げた。

「おまえら、楽しんでこい」

 イタリアは、サッカーに関してとても非情な国だ。

 世界王者として臨んだ2010年南アフリカW杯でグループステージ敗退が決まったとき、全国紙の1面に11個の棺桶を並べられて「恥を知れ」と罵られるような国だ。

 だから、決勝戦を「楽しめ」と言える監督などいなかった。たとえいたにせよ、代表監督というポストにたどり着けなかったはずなのだ。ロシアW杯予選敗退の後、連盟はマンチーニに賭けた。

 歴代のイタリア代表では、ユベントスやミランの選手を中心とするブロックが中心となり、彼らを中心に戦力を肉付けしていくチーム作りが伝統とされてきた。

 しかし、かつて現役時代にサンプドリアという地方都市クラブをスクデットに導いたマンチーニは、まずやりたいスタイルを提示し、そこに合致する選手をクラブの知名度や代理人の圧力に惑わされず抜擢した。

 本大会では2得点のMFマッテオ・ペッシーナや守備固めに貢献したDFラファエウ・トロイのアタランタ2選手を初め、地方クラブ組の活躍なくして優勝はなかった。サッスオーロから3人がEUROに招集されて活躍するなど、10年前には誰一人想像もしていなかっただろう。34戦無敗のチームは、文字通りイタリア全国の代表だ。

開始2分で失点しても慌てる必要はなかった

 イングランドとの決勝戦には不利な条件が揃っていた。だが、不思議なことになぜか負ける気はしなかった。

 理由を探るうちに、9年前のEURO2012決勝戦でイタリアを打ちのめしたスペイン代表に思い当たった。2015年と2017年のCL決勝戦でそれぞれユベントスを破り、欧州を制したバルセロナとレアル・マドリーも思い出した。彼らは多くの選手にとって一生に一度あるかないかの“頂点を決める決戦”に場馴れしていて、どう戦えばいいかを憎らしいほど熟知していた。

【次ページ】 「この優勝をダビデ・アストーリに捧げます」

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