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「ダウンタウンさんや千鳥みたいには至ってない」M-1王者から11年・笑い飯に聞く、“天下を獲る”野望の達成度 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2021/07/16 11:03

「ダウンタウンさんや千鳥みたいには至ってない」M-1王者から11年・笑い飯に聞く、“天下を獲る”野望の達成度<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

昨年結成20周年を迎えた笑い飯の西田幸治(47歳、左)と哲夫(46歳)

西田 2人とも天才ですよ。粗品は多才やし、せいやは異常者ですから。

――お2人もまさにそうだったんでしょうけど、どこかぶっ飛んでるくらいでないと、この世界で抜け出ることなんてできないですもんね。結局、芸人が進むべき道として、答えらしきものがあるとしたら、自分たちがおもしろいと思うことを貫くしかないんでしょうね。

哲夫 そうですね。それが漫才ですもんね。

西田 どうやったらM-1で優勝できますかとか聞かれても、そんなの、ないですから。M-1は赤と、青と、黄色があって、どの色がいちばんかを決めるようなもんですから。そこに正解なんて、ないでしょう? だったら自分の好きな色を選んで、それをどんどん濃くしていくしかない。

「ダウンタウンさんや千鳥みたいには至っていない」

――哲夫さんは若い頃、「自分の王国を作りたい」とか「天下を獲りたい」という発言をよくされていました。その野望は今、どれくらいまで達成されたと思いますか。

哲夫 M-1で優勝して、上方漫才大賞(2014年)もいただいて、両方とも天下だとは思うんですよね。でも、僕を慕ってくれていた後輩芸人たちがどんな風になって欲しかったかと言ったら、やっぱり、ダウンタウンさんだったり、今やったら、千鳥みたいな感じやったのかなとは思います。なので、そこは至らなかったとしか言いようがない。僕も、そういう風になりたいと思っていましたしね。

――一世を風靡した女性芸人にインタビューさせてもらったとき、その方が「おもしろくなりたいと思ったことは一度もないんですけど、誰よりも強く売れたいとは思っていた」とおっしゃっていて。そのとき、ハッとしたと同時に、お2人の顔が過ぎったんです。笑い飯は、ある意味、まったく正反対だったんじゃないのかな、と。ただただ、おもしろいことだけを追求してきてしまったのではないかな、と。

西田 自分なりには、いろいろ(売れる方向に)合わせてきたとは思っているんですよ。ただ、本当の意味で売れるんだという方に思い切って舵を切ったかというと、それはできなかったのかなとは思いますね。

哲夫 企業とかでも、おそらく、そうなんじゃないですか。どんなに実力があっても、それだけで出世するわけではない。それはどの世界でも同じなのかなとは思います。

西田 ただ、長年、芸人を続けられている人は、例外なくおもしろいですよ。おもしろくないのにずっとこの仕事を続けられているという人は、やっぱりいないですね。

――先ほど、せいやさんは「異常者」だとおっしゃられていましたが、ある評論家が、通常、コンビは片方が異常なら片方は常識人にならざるを得ないが、笑い飯は両方とも異常者だと書かれていました。もちろん、褒め言葉として。

哲夫 異常な話にずっと付き合っている時点で、常識人と思われている方も、実は異常なんですよ。でないと会話は成立しませんから。その異常な人たちの異常な話にお客さんは付き合ってくれている。そこがまたおもろいんですよ、漫才は。

(【前回を読む】「紳助さんが冷水をぶっかけるんです」笑い飯がいま明かす初期M-1の“殺気”…スリムクラブには「お前らの勝ちや」 へ)

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