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「紳助さんが冷水をぶっかけるんです」笑い飯がいま明かす初期M-1の“殺気”…スリムクラブには「お前らの勝ちや」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph bySankei Shimbun
posted2021/07/16 11:02
2010年M-1王者になった笑い飯の西田幸治(真ん中)と哲夫(右)。02年~10年まで9年連続M-1ファイナリストの大会記録を打ち立てた
哲夫 自分が出ているところは全部、お笑いにしたいんですよね。真面目にネタ合わせをしているところなんて絶対、見られたくなかった。舞台裏でネタ合わせしているときに撮られてるなと思ったら、ぜんぜんちゃうネタやり始めてボケたり。M-1って、「舞台裏はこんなに真剣なんです」みたいな見せ方をしているんで、それがええ「フリ」になってるんですよ。お葬式の最中に屁をこくと、思わず吹き出してしまうのとよう似てるんです。
西田 あと、真剣モードになると、余計に緊張してしまうんですよ。どこかなめた感じでやってないと、雰囲気に飲まれてしまうというか。
――芸人の態度として、どちらがより一生懸命かと言われれば、ヘラヘラしている方がより一生懸命やっているんだろうなという気もしました。
西田 そうかもしれませんが、さすがに今は、TPOに合わせて、それなりに振る舞うようになりました。無理してボケても痛々しいだけですから。未だに嬉しい場面でも悲しい場面でも関係なくボケてんのって、天竺鼠の川原(克己)くらいじゃないですか。芸人仲間に「いつまで尖ってんねん」って言われてますけど、いっつも「尖ったまま売れたいんです」って言ってますね。
哲夫 僕も最近はM-1で優勝して涙を流している芸人とかを観ると、つい、もらい泣きしてしまいますもんね。いち視聴者になると、M-1のあの感じ、やっぱりええな、と。
――出場している芸人は芸人で、ファンがそういう姿を期待しているので、それに応えなければいけないと思っているのかなという気もします。
西田 去年もマヂカルラブリーの野田(クリスタル)君がボケなしで、感極まっとったでしょう。あれも、ほんまはふざけたかったんちゃうかな。だから、偉いなと思ってしまいましたね。
和牛は「漫才か否か」
――今、マヂカルラブリーの名前が出たので、おうかがいしたいのですが、マヂカルラブリーが優勝した後に巻き起こった「あれは漫才か否か」という漫才論争は、どのように眺めていましたか。
西田 今さらでしょ。ジャルジャルだって、そう言われてもおかしくないくらいの漫才をしていたときがあったじゃないですか。むしろ、世間にそう言わせたマヂカルはすごいと思いましたけど。
哲夫 その辺、世間とのズレがあるんですよね。だったら、和牛が出てきたとき、「これは漫才なのか」って言えよって思うわけですよ。そうしたら、なかなかわかっとるやんけ、と思うんですけどね。
――和牛の「非漫才」的なところとは?