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「ベルマーレのビール、作ってくれませんか?」クラフトビール醸造所がJ1スポンサーに… 人気爆発のきっかけはFC東京サポだったワケ
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/07/10 11:01
湘南のホーム開催と言えばベルマーレビール。「サンクトガーレンブルワリー」の岩本伸久さんに話を聞いた
Jリーグとクラフトビール、共通点は「地域密着」
Jリーグとクラフトビールの親和性は高い。真っ先に浮かぶ共通点は地域密着だ。アメリカのブルワーズアソシエーションはクラフトビールの概念を「小さな醸造所」、「革新(歴史的なスタイルを独特のひねりを加えて解釈し、前例のない新たなスタイルを開発する)」「独立性」という言葉で紹介している。
地域密着というJの理念はもちろんのこと、フードパークや安全なスタジアムといった日本ならではの観戦文化を作り上げていることや、大企業を母体に持たない市民クラブも少なくないことなど重なる部分は多い。
今回は、最も古くからJリーグクラブと関係のあるサンクトガーレンの岩本伸久さんと、今年から新しくJクラブとタッグを組んだブルワリーの1つであるディレイラの山崎昌宣さんにお話をうかがうことができた。
この2つのブルワリーは、どちらもクラブのスポンサーになっている。そのお話から、2つの文化の共通点やJクラブとスポンサーの関係のありかたについて知見を広めていきたい。
(1)サンクトガーレンブルワリー
サンクトガーレンブルワリーは神奈川県厚木市で2002年に設立されたブルワリーで、社長は岩本伸久さん。岩本さんのビール作りは1993年からアメリカでスタートし、厚木に工場を設立したのは1997年だ(詳しい歴史は同社のホームページを参照)。
湘南ベルマーレには2009年からビールの提供を開始しており、同時にスポンサーでもある。どちらもJリーグクラブとクラフトビールの関係として史上初のものだった。
――2009年当時、クラフトビールそのものの状況はどうだったのでしょうか?
岩本さん:まだ今のように知名度は上がってきていなかったですね。2011~13年あたりでグンときた感じで、2009年頃はまだ全然ダメな時代でした。
――そういう時期に、ベルマーレとの関係が始まったわけですが、きっかけはどのようなものだったのでしょうか?
岩本さん:ちょうど"タンク1本売ります"というのを商品としてパッケージ化してみた時で取材してもらえて日経に載ったんですよ(オリジナルビールを作るというもので、現在も実施中。タンク1本1000L、小瓶約3000本分で、完全オーダーメイドの基本価格は170万円)。それを見た水谷さん(水谷尚人代表取締役社長。※当時は社長室長)がいきなり電話をくれて「ベルマーレのビールを作ってくれませんか?」と。いきなりだったので、「どうしたんですか?」とお会いして聞いてみたら「うちはお金がなくて、少しでも売り上げが上がるものを考えたくて」と。
なんとベルマーレからの“オファー”だった
なんと、売り込みではなく、ベルマーレの方からオリジナルビールのオファーがあった。しかし、オリジナルビールを作って約2週間に1度のホームゲームで消費しきる、というのは当時まだ現実的に無理だった。そのため、既存の商品を専用ラベルで販売する方法になった。