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「人間的にすごく成長できている」ダルビッシュ有がシカゴで味わった地獄と天国…メジャー最速1500奪三振までの心の変遷
posted2021/06/30 11:03
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph by
AP/AFLO
メジャー通算197試合目で到達した、歴代最速の1500奪三振。
その偉業から6日を経た6月27日(日本時間28日)、パドレスのダルビッシュ有は気持ちも新たにダイヤモンドバックス戦に臨んだ。
「あれで1回スッキリした部分があるので、あまり考えずにいつも通りに試合に入っていきました」
6回1失点の好投も8勝目はならなかったが、安定した投球で締めくくった6月の5登板には、渡米10年の時間軸に沿って変化した、ダルビッシュの心の変遷が浮き出ている。
表の顔と裏の顔
今季6つ目の白星で日米通算170勝を積み上げた3日のメッツ戦後、女子テニスの大坂なおみが、数年来のうつ病を公表し全仏オープンを棄権したことについて見解を求められ「アスリートは普通にプレーしているから健康だって言われるのはよくあると思いますけど、それ(病)をずっと我慢して大坂選手もやっていたと思うし、すごく大変なことだと思う」と発言。好不調の波に揺られながらも、メディア対応を義務付けられるプロアスリートの心情を代弁する言葉も織り込んだ。
「表で見せている顔と家に帰った時の顔が僕らは変わります」
表と裏の顔――忘れられない一コマがある。
レンジャーズ時代の16年春だった。その前年3月に、右肘靱帯を部分断裂し手術を余儀なくされたダルビッシュは、アリゾナ州サプライズのキャンプ施設で、リハビリのメニューを淡々と消化する日々を送っていた。ある朝のこと。クラブハウスにいつも連れ立って来る愛息の姿がない。
気になった。報道陣の数もまばらになった数日後、ダルビッシュはこう明かした。