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松島のスピード、姫野のトライ…誰も日本を軽視しなかった 現地メディアが“4カ国スター軍団”ライオンズに「合格点」を出した理由
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byGetty Images
posted2021/06/28 11:03
ライオンズ相手に堂々と戦ったラグビー日本代表。欧州遠征はまだ続き、3日にはアイルランド代表とダブリンで対戦する
後半に修正したい日本代表に対し、ライオンズは早々に追い討ちをかける。
49分、日本代表の「ブリッツ・ディフェンス(外にボールを回させないように、アウトサイドCTB付近のチャンネルのパスコースを防ぐディフェンス)」の綻びをついて、青いヘッドキャップを装着したタイグ・バーン(FL・アイルランド)がポールの真ん中に飛び込んだ。ライオンズ初招集となったバーンのトライ、コンバージョンキックも決まって28-0となった。
しかし、日本代表はここから意地を見せる。
59分には、ライオンズ陣ゴール前のラインアウトから上手くずらすと、後半から出場したFL姫野和樹が同じく途中出場のテビタ・タタフと2人で押し込んだ。まさにパワープレーから記念すべき日本にトライが生まれた。
その後、SO田村優のペナルティキックでスコアを重ね、さらにはSH齋藤直人の緩急ある球出しもあって何度も敵陣に迫った日本代表。ライオンズの強靭なディフェンスに手こずったが、それ相応のインパクトを与えた。
メディアはライオンズに「合格点」
そんな日本代表の戦いぶりは現地メディアにも高評価に映っていたようだ。
スター揃いのライオンズといえど、もはや日本代表を簡単な相手だとナメてかかる選手など誰もいなく、28-10という結果に「合格点」を与えた。前半にセットプレーで松島幸太朗に抜かれたコナー・マレー(SH・アイルランド)に批判の声が集まっていたが、全体的には「骨のある相手(日本)にいい試合をした」という評価だ。日本に対してのリスペクトが窺える。
さらに、後半に追い上げられた理由を「ライオンズの疲れが目立ったため」と評するものが多かったが、これは姫野をはじめとした途中出場した選手のパフォーマンスがライオンズの選手を上回った、と見ることもできるだろう。
もっとも4年に1度結成される、4カ国連合(アイルランド、イングランド、ウェールズ、スコットランド)のライオンズは、今回は計9試合のツアーを行っていく。2019年ワールドカップで素晴らしい活躍を見せたとはいえ、初戦で日本代表に負けるわけにはいかなかった。
37選手で構成される今年のライオンズの選手たちの最大の目標は、最後の3試合である南アフリカ代表戦に出場し、勝利に貢献することだ。毎試合、スタメン出場の15人、リザーブの8人、それ以外の14人に選別される。普段はテストマッチで敵同士として戦う選手たちが合宿生活を送り、練習や試合を通じて熱い友情を築き上げるのがライオンズのモットーだが、トップレベルのアスリートたちは常にこうした争いの中で生きている。当然、この日本戦もモチベーションは高かっただけに、ジャパンは“本気”のスター軍団を相手に堂々と立ち向かったのだ。