進取の将棋BACK NUMBER
藤井聡太二冠に6勝1敗…「豊島将之竜王、さらに強くなった」理由を佐藤紳哉七段、中村太地七段と考えた【王位戦も展望】
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2021/06/29 11:07
藤井聡太二冠と豊島将之竜王・叡王。王位戦と叡王戦でのタイトルマッチは大注目だ
中村 今もまだ鉄則的なものは確立されてないですからね。これから数年でどうなるかは分かりませんが、現状ではまだ誰もが手探り状態ではないでしょうか。例えば序盤研究で"この形がいいか悪いか"を分析するなどは取り入れていますし、その形で勝てるケースもある。でも実戦で未知の局面がやってきた際には「将棋の真の強さ」が試される。そこの能力をどう鍛えられるのかは、まだ誰も分かっていない部分だと思います。
「評価値に踊らされる」という表現の本質とは
紳哉 そこで、かすかにでも強くなりたいんだけどね(笑)。それだけで、全然勝率も変わってくると思うんですけど。
中村 例えばコンピュータと対戦した際、評価値を見て、評価値が落ちたところを分析する……などが1つの典型的な形でしょうか。自分はどういうところで間違えやすいかというのを分析する。ただ、それを具体的にどう鍛えるかを考えていくことは、また別の意味で難しい課題です。
紳哉 そう考えると、豊島竜王はさらにコツコツと、もっと地道な作業や研究を続けてるんだと思いますけどね。
中村 紳哉先生が先ほどおっしゃっていた「弱くなる可能性もある」というのは、その通りだと思っています。AIでの研究に没頭しすぎると、気づいたら一番大事な将棋の筋力的な部分が衰えてしまいかねない。それが棋士として「評価値に踊らされる」という表現の本質なのかもしれません。
紳哉 結局、何もやらない人が勝つということも十分にあり得るのかな……というのが現時点での感覚ですよね。
豊島竜王と藤井二冠の対戦成績はそこまで……
――AIについて非常に興味深いのですが、豊島竜王のお話に戻せればと思います。王位戦を前にした時点で、藤井二冠に対して6勝1敗という成績です。