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井上尚弥がダスマリナス戦に“いつも以上のモチベーション”を持てる理由 大橋会長「今回の尚弥はすごい」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byGetty Images
posted2021/06/19 11:03
井上尚弥(左)は、圧倒的有利と見られているダスマリナス戦にもモチベーションを落とさない
序盤の決着もシナリオとしては十分あり得る
全階級のボクサーをランク付けしたリング誌のパウンド・フォー・パウンド・ランキングで2位の井上と、ビッグネームとの対戦がないダスマリナス。格の違いは明らかであり、いつものことながら20戦全勝17KOの井上が圧倒的有利とみられている。となれば今回もやはり、モンスターが挑戦者をいかに料理するかが焦点になるだろう。
「相手は長身のサウスポーなので、距離感だったり、突破口だったり、ディフェンスだったり、いろいろと気をつけるところが出てくると思う。ポイントはダスマリナスの一発に気をつけながら崩していくこと。攻め急がず、ゆっくり調理しようかなと思っています」
ダスマリナス戦について問われた井上はこう答えている。となると、井上がスタートからジワジワとプレスをかけてカウンターを狙うダスマリナスを追い込んでいく、という展開がイメージしやすい。右ストレート、左フック、左ボディブロー。あらゆるパンチが必殺ブローという井上の相手をするのだから、ダスマリナスが強いられる緊張はかなりのものだろう。
井上が少しずつ、そして着実にダメージを与えていけば、フィリピン人が立ったまま終盤を迎えるのは難しいのではないか。井上がサウスポーと前回対戦した18年のフアン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)戦は右の一発で初回1分10秒KO勝ち。序盤の決着もシナリオとしては十分あり得るだろう。
チャンピオンに万が一、落とし穴があるとすれば
盤石のチャンピオンに万が一、落とし穴があるとすれば「油断」、あるいは「けが」や、ダスマリナスのバッティングといったアクシデントであろうか。ところがこれに関しても、「スパーリングは全部見ているけど今回の尚弥はすごい。前回よりもいい」と不安を一蹴するのは大橋秀行会長だ。本人も「体調を含めて調子が良かったので、普段は4ラウンドのスパーリングが自然と6、8ラウンドと増えていった」とトレーニングを振り返っており、もうどこを探してもスキが見つからない、といった感じである。
そもそも格下が相手であっても決してモチベーションが落ちないのが井上の強みだ。しかも今回はモチベーションが落ちないどころか、むしろ気持ちは高まっているように思える。
その理由は明快だ。