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プロ野球スカウト「慶應大の正木とは全てが違う」「ドラフト上位もある」“急浮上”ブライト健太(上武大4年)とは何者か?
posted2021/06/14 11:05
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
高校野球の「甲子園」でも、学生野球の「全日本大学野球選手権」でも、不思議なことに、大会で試合を重ねる中でどんどん上手くなっていく選手というのがいるものだ。
今回の大学選手権でいえば、差し詰め、上武大学のブライト健太外野手(4年・184cm85kg・右投右打・都立葛飾野高)がそうした存在にピシャリ当てはまるだろう。
1戦目の西日本工業大戦での左翼弾に続いて、準々決勝の東京農大オホーツク戦でも、打った瞬間に左翼中段へ飛び込む一発。その間、2戦目の桜美林大戦では、シュアに3安打を放ち、手のつけられない勢いだ。
「足立十一中のブライト」知らぬ者がいないスラッガー
西日本工業大のエース・隅田知一郎(4年・176cm75kg・左左・波佐見高)は、今大会No.1投手に挙げるスカウトも複数いるほどのドラフト上位候補。その快腕を相手に、最初の打席からちょっと外めの速球をいきなりものすごいスイングでレフトポール際に「あわや!」の大ファール。
直後、同じコースをまったく同じスイングで、今度こそ左中間最深部に堂々のアーチをかけたから驚いた。普通なら、右中間方向へ持っていこうとするボールだ。
とんでもないスイング……それが、ブライト健太の「才能」だ。
「たとえば、慶應の正木(智也)だって、あそこに放り込むけど、ブライトは打ち方が違う。しなる……スイングもしなるし、全身がしなる。今はフルスイング大流行だから、背中叩くほど振り抜いていくバッターが多いけど、みんな、体ねじって無理して振ってるでしょ。ブライトはそれを自然にできる。普通に振っても、体が柔軟で体幹が強いから、自然に背中叩くほどのフィニッシュになる。あの柔らかさと強さ、日本人じゃ、なかなか両立しない」
あるスカウトは、メジャーのドラフト候補の「向こうの大学生」が1人、上武大の打線に混ざっているようだ……と、ブライト健太を評した。
東京の下町の生まれ育ち、父親がガーナ人。
50m5秒8、ライナー性の軌道で80m投げられる強肩。一級品の身体能力は中学時代からフルに発揮され、運動会はひとり舞台、中学軟式では東京の下町界隈で「足立十一中のブライト」といえば、知らぬ者のいないスラッガーだったという。