「2つの四球」もスゴかった

　そして、準々決勝の東京農大オホーツク戦だ。

　初回、相手投手の乱調により連続四球で無死一、二塁にしながら、二塁走者がけん制で憤死。嫌な流れができそうな場面で、フルカウントからファールで粘ったブライト健太が、レフト線に二塁打を放つ。

　ここでなんとかしないと、試合の流れが相手に行ってしまいかねない。そんな明確な意識が伝わってくるようなひと振り。決して強く振り過ぎることなく、狭い振り幅できちんとジャストミートしてヒットコースへ持っていった。間違いなく「わかってるヤツ」の打ち方だった。

　さらに、第3打席だ。相手投手が「1年生」に代わって、ストライクをとるのがやっとなのを見抜くと、大胆なトップを作って好球を待ち構える。魅入られたように彼の「ゾーン」にフラッと入ってきた速球は、次の瞬間、もうレフトスタンド中段でポンポンと跳ねていた。

　試合の後、問われた彼は「狙って打ちました」と証言したが、見ていれば一目瞭然。感心するのを通り越して、呆れて笑ってしまうようなスーパービームだった。

　そして快打2本も見事だったが、ほんとに唸ったのは、その間に選んだ2つの四球のほう。

　間違いなく厳重マークされていたこの日、ブライト健太には多くの誘い球が投じられたが、彼はそれらに見向きもしなかった。前の打席の快打の余韻にあおられるように、手を出してはいけないボールについちょっかいを出してしまうのは、ありがちなこと。だが、準々決勝での彼は程よく燃えながら、頭の芯はヒンヤリ冷えているようだった。

　決して燃え過ぎることなく、ここ一番では、ミスショットなく失投を捉える。プロ顔負けの高等技術をやってのけてみせた。

「左足首じん帯損傷」なのに打席に立った

　今から4年前の春・4月。閉鎖になってしまった神宮第二球場は、当時、東京の高校球児の中心地だった。

　春の都大会、パンフレットのメンバー表にあった「都立葛飾野高・ブライト健太・183cm84kg」の文字に惹かれて、球場に向かった。

都立葛飾野高時代のブライト健太（写真は2017年7月の東東京大会）　©Sankei Shimbun

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　試合開始前、松葉づえでグラウンドに現れた均整抜群の選手が「ブライト健太」だとわかって、ひどくガッカリしたのを覚えている。詳しい人に訊いたら、「左足首じん帯損傷」だという。

　強豪・日大三高にコールドスコアの大差をつけられた最終回、それでも、「代打・ブライト健太」が足を引きずりながら、ダグアウトから出てきたから驚いた。

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