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サイ・ヤング賞投手たちの異常なデータ…「悩みではあった」ダルビッシュも指摘する“不正投球問題の実情”
posted2021/06/12 11:02
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
メジャーに日常が戻りつつある。
6月7日。エンゼルスなどはワクチン接種完了後2週間が経過し、その証明書があるメディアに対し、試合前のフィールド取材を許可した。マスク着用は義務付けられているが、選手に対面取材することも可能。2020年3月に春キャンプがシャットダウンされて以来15カ月ぶりに戻った通常取材に感慨深いものがあった。
また、カリフォルニア州に本拠地を置く球団では6月15日以降「フル・キャパシティ」での観客動員が許される。ワクチン接種完了者であれば、マスクなしで客席で試合を楽しむことができる球場も一部ある。
その喜ばしい環境が戻りつつある一方で『不正投球』という嫌な言葉が、メジャーの報道を支配するようになった。
ことの発端は、米国で最も著名なスポーツ誌「スポーツ・イラストレイテッド(電子版)」が不正投球の現状をリポートしたことだった。違反者には出場停止などの処分が7月にも科されるという。
投球回転数をあげるために?
周知の通り、メジャー公式球の皮質は“ツルツル”であり、日本の“しっとり”とした高級感とは大違いである。だからであろう。メジャーの投手は大昔から滑るボールに様々な対策をとってきた。
*唾をつける
*日焼け止めクリームに汗とロジンバックをミックスする
*松ヤニをつける
上記したものは古くから伝わる古典的なものでいずれも『禁止行為』だが、機構側も度が過ぎなければ黙認をしてきた。だが今回は、新たな『異物付着』が顕著になったという理由でそれを取り締まることになった。
キーワードはスピンレート(投球回転数)。
多額の開発資金をもとに15年からメジャー各球場には「トラックマン」が設置されるようになった。投手ならば投球回転数、打者ならば打球速度などの数字が細かく分析できるようになり、そのデータは選手のパフォーマンス向上に大きく繋がることになった。
だが、その一方でスピンレートが投球向上に大きく役立つことがわかると、一部の投手は向上のために有効な粘着物質付着へと走った。