濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
RIZIN.28、那須川天心の「1vs3」マッチは“企画もの”か“大ピンチ”か? 東京ドームで朝倉海、朝倉未来を待つ試練とは
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/06/12 17:02
那須川天心はRIZIN東京ドーム大会でこれまでとは異なる闘いに挑むことになる
那須川天心が挑む異例の1vs.3マッチは鬼門
もちろん、そこには那須川天心も欠かせない。開催直前になって発表されたのは、3人の相手と1ラウンドずつ次々に闘う、異例の1vs.3マッチだ。対戦相手は公募、榊原CEOによると「トップファイターから冷やかしまで」500人の応募があったという。
パンチのみ、蹴りなしのスタンディングバウト(バックハンドブロー有効、シューズ着用は任意)。1人目に登場するのは大崎孔稀、2人目がHIROYA、3人目は当日発表のXとなっている。
通常の試合で相手が決まらなかったことによる、苦肉の策なのは間違いない。YouTubeでのスパーリング対決のような“企画もの”にも思える。ただこの“企画もの”は、那須川にとって意外な鬼門、難関になる可能性もある。それはなぜか。
試合をするのは、いつもと同じ3分3ラウンドだ。ただしその中身が違う。1ラウンドと2ラウンド、3ラウンドで相手が変わるということは、ラウンドごとに無傷、ノーダメージの相手と闘うわけだ。もちろん那須川もスタミナは十分にあるのだが、ラウンドを重ねた分だけ疲労なり何かしらのマイナスはあるだろう。
そこに“フレッシュ”な相手が向かってくる。1ラウンドに闘う大崎は兄の一貴とともに53kg級で活躍する選手。いくつものベルトを獲得している。7月から始まるRISEトーナメントの出場権は逃したが、これは選抜マッチをコロナウイルス陽性反応により欠場したため。日本における同級トップクラスの実力者という評価は揺るぎない。
那須川のベスト体重は55kgだから、大崎はそれよりも軽い選手だ。だがその分、スピードで対抗できる可能性がある。那須川にとって厄介なのは、大崎と拳を交えた直後にHIROYAが待っていることだ。
那須川の相手にはスタミナ配分の必要がない
HIROYAはK-1、Krushの65kg級で結果を残してきた。今回は準備期間の短さもあり75kgの規定体重でリングに上がる(那須川8オンス、HIROYA10オンスのグローブハンデ)。自分より軽い階級の相手から、過去最重量の相手へ。圧力、パワーだけでなく大崎とのギャップも怖い。スピードで言えばHIROYAのほうが遅いのだろうが、逆にその“遅さ”に戸惑わされるかもしれない。
通常の試合なら、1ラウンドは様子を見て相手の動きを分析し、後半戦で勝負をかけるという戦略もある。コツコツとダメージを与えて相手を“削る”のも定石だ。しかし今回はそれができない。1人につき勝負は3分きっかり。なおかつ、相手はその3分に全力を凝縮してぶつけてくる。スタミナ配分の必要がないのだ。もちろん相手のほうが準備期間は短いのだが、那須川は事前の研究、対策も3人分になる。