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引退を伝えると親友・細貝萌は泣いた…イランなど7カ国でプレーした赤星貴文が激動の半生を語る【妻とはポーランドで出会う】
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/06/10 11:01
浦和レッズ時代からの親友、赤星貴文(左)と細貝萌
「海外でも日本人がなかなかプレーしていない国でやっていますし、僕みたいなキャリアの人って確かにあんまりいないのかもしれない。オリジナルのキャリアというわけではないんですけど、僕が伝えることでその選手なりのキャリアを見つけるヒントになればいいかなっていう思いはあります」
地元や若い選手たちに還元していく新しい役目も十分に認識している。ただ、自分としても新たな価値をつくっていかなければならない。7歳の長女を見ていると、とても刺激になる。実質初めての日本での生活になるが、とにかく吸収のスピードが速いという。
細貝に「営業しながらサッカーをやることになった」と話すと……
「日本語の読み書きはまだまだ時間が掛かるかなと思っていたんですけど、日本に戻って2カ月くらいで漢字も上手に書けるようになってきています。子供って本当に凄いなって思うんです」
娘だって新しい環境で自分の価値をつくろうとしている。パパが負けるわけにはいかない。引退を取りやめてプレーすると決めた以上、赤星貴文の価値を示していかなければ後輩たちにも自分の言葉が響いていかない。それに自分のプレーを家族も楽しみにしている。
「地元のテレビのニュースが流れたとき、娘が“これ、パパじゃん”って驚いていました。僕がサッカー選手だとイマイチ理解してなかったんじゃないですかね(笑)。でもこれからはプレーするところをいっぱい見てもらえるんじゃないかと思います」
現役続行を決めた際に、タイにいる細貝に連絡を入れた。
「営業しながらサッカーをやることになったという話をしたら、それはそれで凄くいいんじゃないかって言ってくれました」
親友はうれしそうだったという。
細貝にも負けてはいられない。戦友である一方、ライバルでもあることに変わりはない。
どこの国でプレーしようが、どこのカテゴリーでプレーしようが関係ない。
自分が選んだ場所で価値をつくれるかどうか、それだけだ。