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鎌田大地はなぜ日本の攻撃をスムーズにできるのか 「良い意味で自分のプレースタイルにプライドがないんです」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2021/06/08 11:00
鎌田大地がトップ下に定着してから、日本の攻撃がスムーズに機能している
嫌な動きを繰り返すことが日本のチャンスを作る
鎌田や南野が言う『相手にとって嫌な』プレーやポジション取り。それを繰り返す先に、どんな未来が待っているのか。大迫はこう解説する。
「強い相手のときには、一発の動きでゴールに向かうのは難しいのでね。大地と拓実が良いポジションをとることで、相手が食いつく。そこで食いついたところに僕が入る。そこでまた(別の相手が)食いついたら、(鎌田や南野が)また違う動きをしてと……その『繰り返し』が大事なんじゃないですか」
前線の選手たちが『相手が嫌な動き』を『繰り返し』ていく。その積み重ねが、今の日本のチャンスを作り出しているのだ。
ギラギラした個の集合体だった2018年
2018年に森保一監督が就任してからは世代交代を進める意味合いもあり、それぞれの選手の良さを出す工夫をしてきた。どの試合のメンバーも代表でポジションをつかみとろうというギラギラした個の集合体だった。就任から最初の5試合の親善試合で結果が出たのも、それゆえだろう。
ただ、それ以降、特に公式戦で苦しんだ理由はハッキリしている。相手を入念にスカウティングするよりも自分たちの良さを出し合う戦いになりがちな親善試合と異なり、公式戦では日本の良さを消そうとしてきたからだ。そこで手づまりになることが多々あった。
当時と比べて、今のユニットが興味深い理由はハッキリしている。自分たちの視点だけではなく、相手の視点も考慮されているからだ。
自分たちの良さを理解した上で、『相手の嫌なこと』を繰り返していく。そこにみんなの意識が向いている。
6月7日のタジキスタン戦では大迫が左足付け根の違和感により欠場。その上で、これまでの試合から大幅にメンバーを代えて入れ替えたトップ下の先発には南野が入り、鎌田は後半開始時から南野と交代でプレーした。
3人のユニットのうちで南野しかいなかった前半は攻撃が上手くいかなかった。だからこそ、南野は思考を切り替えたという。
「(攻撃を活性化させる)プレーも重要だけど、ゴールへの嗅覚じゃないですけど、イレギュラーに(クロスに)早く反応して、どんな形でも点を取ることがこういう戦いでは絶対に重要になってくるなというのは感じていました」
その南野が、前半40分に2-1の勝ち越しゴールを決めた。力の差がある相手にリードを奪った日本は、後半には危なげない戦いをみせて4-1で試合を終えた。
万能型ではあるものの本職がセンターフォワードの大迫と、チームの流れが悪くてもゴールに直結する動きで問題を解決できる南野。
現体制で長く攻撃をけん引してきた彼らと、「チャンスメイクの方が合っている」という鎌田が「相手にとって嫌な動き」を「繰り返して」いく。
そのケミストリーに、攻撃で良い流れが生まれている秘密が隠れているのではないだろうか。