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“アジアの至宝”右代啓祐(34)が大勝負に出た! 日本選手権を棄権して狙う東京五輪の切符「最高の準備を行い、待つしかない」
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2021/06/03 17:00
日本選手権を棄権し、スペインの国際大会へ出場する右代啓祐。7月で35歳となるベテランが3度目の五輪出場を懸けて勝負に出た(写真は2020年日本選手権)
高ポイントを得るための決断。さらに“6月”の日本選手権に出場することへの不安要素も重なっていた。
「日本選手権で高いパフォーマンスを出し、皆さんの前で優勝して五輪内定を勝ち取るという考え方もありました。ただ6月の日本は雨も多く、風も吹く。悪天候が続く可能性も高い。いい記録が出ないリスクも抱えているんです。それに、コロナ禍によって国内の情勢がどう変わるかもわからない。
それであれば、出場選手のメンバーのレベルを鑑みても、確実に高いポイントが取れるスペインの大会に出場して、ポイントを積み上げ、ワールドランキング24位以内に入って東京五輪切符を勝ち取るほうが、可能性が高いと判断しました」
100mや1500m、跳躍、投てきなど多様な10の種目をこなす超人たちの戦いだ。ただでさえ、さまざまな神経をすり減らすのだから、できる限りリスクを減らしたいと考えるのは当然だろう。右代自身も、この時期に海を渡ることへの葛藤はあったというが、日本陸上競技連盟が「最善の判断」と判断し、スペインの国際大会への出場を認めたことも後押しとなった。
“自分を超える”を止めない
スペインの地で高ポイントを獲得し、ワールドランキングの24番以内を確定させれば、7月頭にも東京五輪出場が決まる。
「東京五輪があるか、ないかは僕らが決めることではない。中立な立場で判断を待つしかない。ただ1つ言えるのは、自分がずっと大事にしてきた“自分を超える”という歩みを止めないこと。その結果を出す場所が五輪であるのは間違いない。最高の準備を行い、待つしかない。
コロナの状況下で国をまたぐのはもちろんリスクがあります。けれど、最善の方法論を取らずして、諦めるのは今後の人生で必ず後悔すると思いました。とにかく自分を超えて、そして30代半ばの同世代の皆さんに、挑戦する姿を観てもらいたい。その一心でスペインに行ってきます」
東京五輪開会式の翌日に35歳を迎える右代。3大会連続の五輪出場へ――このタイミングで海へ渡るという“大勝負”に出たアジアの至宝は、切符を勝ち取ることができるだろうか。どんな状況下でも最善の道を進む男の吉報を待ちたい。
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