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大谷翔平と3人のジュニア。14年360億円超大型契約の千両役者、タティースJr.が“常人離れ”の本領発揮 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byGetty Images

posted2021/06/05 06:00

大谷翔平と3人のジュニア。14年360億円超大型契約の千両役者、タティースJr.が“常人離れ”の本領発揮<Number Web> photograph by Getty Images

180度開脚で膝元のボールをかわしたタティースJr.。走攻守揃った選手の身体能力の高さが垣間見えた

 タティースが22歳、アクーニャが23歳。ともに年齢が若いだけに、今後の数字も、ある程度バラつきが出るかもしれない。ただ、このところはタティースの追い上げが急だ。とくに5月26日から29日にかけて、彼の所属するパドレスは、4日連続で延長戦にもつれこみ、3勝1敗と生き延びたのだが、タティースはこの4戦で9打点を記録する勝負強さを見せつけている。

 なかでも記憶に残るのは、29日の対アストロズ戦、3対6で迎えた9回表、2死二、三塁で放った特大の一発だろう。マウンドには、抑えの切り札ライアン・プレスリー。

 パドレスの先発ダルビッシュ有が珍しく制球に苦しんだ試合だから、覚えている方は多いだろう。この日のタティースも、それまで4打数3三振と、アストロズ投手陣の内角攻めに抑え込まれていた。

 ワンボール・ノーストライクの2球目、タティースはプレスリーの高目球に手を出し、一塁のファウルグラウンドにポップフライを打ち上げた。これで万事休すかと思った瞬間、一塁手テイラー・ジョーンズがグラウンドの盛り土に足を取られ、仰向けに転倒して球を取り損なってしまった。

 首の皮一枚でつながったタティースは、やや真ん中寄りに入ったつぎの内角球(95マイル)を見逃さなかった。高く舞い上がった打球は、左翼後方に設置された模型機関車の軌道を越えていく。飛距離448フィートの第15号。パドレスは6対6の同点に追いつき、最後は延長12回、ウィル・マイヤーズの3点本塁打で、アストロズを11対8と突き放したのだった。

珍プレーに垣間見えた、類まれなる身体能力

 そういえばタティースは、この試合でもうひとつ見せ場を作っている。8回表の第4打席、この日3個目の三振を喫する前に、曲芸師のような恰好で球をよけてみせたのだ。 

 アストロズの投手は、大ヴェテランのジョー・スミスだった。内角低目に投じられたスミスの球は、タティースの右膝すれすれに食い込んできた。タティースはその球を、信じられないほど柔軟な動作でよけた。

 右膝をうしろに引きつつ、タティースはずるずると地べたにへたり込んだのだ。当然、両足は180度開脚の形になる。並の選手なら股関節脱臼を起こしそうな姿だったが、タティースは平気な顔をしていた。見ていたこちらも、思わず吹き出しそうになった。

 まったく、これほど客を楽しませてくれる選手はそうそういない。いまは、彼と大谷翔平が双璧だろう。こんなに身体が柔らかいのなら、もっと常人離れしたプレーも期待できるのではないか。守備の凡ミスが減り、打撃の勝負強さに磨きがかかれば、彼の未来はまだまだ広がりそうな気がする。

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