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大谷翔平と3人のジュニア。14年360億円超大型契約の千両役者、タティースJr.が“常人離れ”の本領発揮
posted2021/06/05 06:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
5月が終わった。今季のメジャーリーグも、ほぼ3分の1が戦われた。5月31日現在、ゲーム数でいうと、ほとんどの球団が55試合前後をこなしている。去年が年間で60試合という短縮シーズンだっただけに、今季はまだゆっくり楽しめそうな気がしてうれしい。
区切りのよいところで、〈スポーツ・イラストレイテッド〉電子版が、2カ月間(4~5月)の両リーグMVPを選んでいる。選者は、トム・ヴァードゥッチやステファニー・アプスティーンなどお馴染みのライター7人だが、7人のうち6人までがア・リーグMVPに大谷翔平を選出している。
無理もない。大谷は「100年に1度」の快挙を進行中だ。彼を外したのは、ブラディミール・ゲレロJr.を推したマイケル・シャピロただひとりだが、大谷を選ばなかった理由(「球界最高の才能だが、投手としての登板がいまのところ30イニングスというのが物足りない」というのが彼の言い訳だ)に苦渋が滲んでいた。
なるほど、今季のゲレロは「開眼」という言葉にふさわしい爆発を見せている。もともと大器の呼び声が高かった選手だが(エクスポズやエンジェルスなどで活躍した父親の、長い腕と悪球打ちを思い出す人も多いだろう。2004年にはア・リーグMVPに輝いたこともあった)、打撃主要部門のスタッツを眺めると、驚くべきパワーが感じられる。
打者三冠なら2012年のカブレラ以来
5月31日現在、22歳のゲレロは本塁打(16本)、出塁率(.430)、長打率(.634)、OPS(1.065)、総塁打数(118)などで、ア・リーグのトップを走っている。打率(.323)がリーグ2位で打点(42)は3位。このまま進めば、三冠王も射程圏内だ。大谷ともども、故障することなくシーズンを戦い抜いて、ハイレベルの数字を競い合ってもらいたい。
一方、ナ・リーグの〈2カ月間MVP〉は、票が割れている。ロナルド・アクーニャJr.を推す人が3名、クリス・ブライアントが2名、ニック・カステラノスとマックス・マンシーが1名ずつ。
意外に思われるかもしれないが、フェルナンド・タティースJr.には票が入っていない。これは、エラー数の異様な多さ(5月末までに14失策)と、4月の不振が影響している。4月の彼は、打率が.246で、7本塁打、11打点。それが5月に入ると、打率.353、9本塁打、26打点と別人のように打ちまくりはじめた。シーズンが終わるころには、MVPレースの先頭を走っているのではないか。
この数字は、開幕早々大暴れしたアクーニャと対照的だ。4月のアクーニャは、打率.341、8本塁打、18打点と突っ走ったが、5月に入ってからは、打率.224、8本塁打、15打点とやや伸び悩んでいる。