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“赤土の王者”ナダルが35歳に 全仏恒例の「特大ケーキで祝福」は16年前のフェデラー撃破から始まった
posted2021/06/03 06:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
全仏オープンの会場ローランギャロスでは、大会期間中の6月3日、毎年のようにラケットやボールのお菓子でデコレートされた“映える”特大ケーキが用意される。ラファエル・ナダルの誕生日である。メディアも立ち入りできるカフェのバルコニーやテニスコート上にそのケーキが運び込まれ、ナダルを招き、立ち会える人みんなで祝福することが、大会のイベントの一つになっている。
4回戦で錦織圭を破った2013年の6月3日は、なぜか一段と派手なお祝いで、コートにケーキが運び込まれてファンもいっしょにバースデーソングを歌った。このときばかりは複雑な気分がしたものだが、とにかくナダルはローランギャロスでは主であり、勝って誕生日を迎えることが前提なのだ。
17歳のナダルが“王者フェデラー”を倒した日
始まりは初出場となった2005年、ナダル19歳の誕生日だった。今思えば、それは運命的な巡り合わせだった。この日倒した相手は、当時世界ナンバーワンに1年以上君臨していたロジャー・フェデラー。すでに全仏オープン以外のグランドスラム・タイトルを全て獲得し、鬼門と目されていた全仏では初めてたどり着いた準決勝だった。
二人の顔合わせは、このときまだ3度目だった。その後の長いライバル物語を思えば、それはほんの序章に過ぎなかったが、すでにドラマチックだった。初対戦は前年3月のマイアミの3回戦。当時世界1位になったばかりのフェデラーを17歳のナダルが6-3、6-3で破った。これが、まだ34位だったナダルにとっての初めてのナンバーワンへの挑戦だった。
まだ通訳を介していた記者会見でこう語っている。
「人生で最高のテニスができた。ロジャーのプレーはベストじゃなかったと思う。僕のような選手でもすごくいいプレーをして、彼のような最高の選手でも自分の力を出せなければ、テニスではこういうことが起こるんだね。この試合が本当に楽しみだったんだ。せめて1ゲームは取ろうとかそういうのではなく、もっとポジティブな気持ちだった」
17年前から、ナダルは今私たちが知るナダルと同じだ。
なぜローランギャロスに愛されたのか?
2度目の対戦までは丸1年空いたが、当時は5セットマッチが採用されていたマイアミオープンの決勝でフェデラーがフルセット勝利でリベンジした。