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イカダでキューバから亡命→MLBで“振り回しすぎ”の低評価→中日で主砲となったビシエド成長記【週刊セパ記録】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/06/01 06:00
好調のビシエド。ドラゴンズの主軸バッターとして不可欠な存在だ
キューバからイカダに乗ってフロリダに
ビシエドはキューバ国内リーグで頭角を現したが、2008年5月に筏に乗ってフロリダに漂着。その後、ドミニカ共和国に亡命した。だから中日の同僚のライデル・マルティネスとは異なり、キューバ代表に招聘されることはない。
MLBでもレギュラーの外野手としてプレーするが、成績はぱっとせず、FAになり中日にやってきた。
2016年、来日当初は本塁打こそ出るものの、それほど評価が高い選手ではなかった。2017年にはアメリカの市民権取得の手続きを怠ったためにシーズン中の6月に渡米し、1カ月も帰ってこなかったこともあり、自己管理が甘いという評価もあった。この時期のビシエドは早打ちで簡単に凡退することも多く、短期間で消えていく外国人選手の1人だと思われていた。
しかし家族を呼び寄せてからビシエドの成績は安定した。投球をよく見て、広角に打ち分ける打撃ができるようになり、2018年には.348で首位打者を獲得した。
上がった守備力、広い本拠地でも打点を稼ぐ
驚くべきは守備能力が向上したことだ。
MLBでは外野手で、一塁は通算15試合しか守っていなかったが、中日では不動の一塁手となった。打球への反応もよく、動きも機敏だ。あの大きな体でダイビングキャッチもしばしば見せる。昨年終盤には、打球に飛びついて左肩を脱臼したが、ゴールデングラブ賞を初受賞している。
中日の本拠地、バンテリンドームナゴヤは広いうえにフェンスが高く、本拠地とする中日は毎年、チーム本塁打数がリーグでダントツの最下位になっている。極端なピッチャーズパークなのだ。ビシエドはこの広い本拠地球場でコンスタントに打点を稼いでいる。
<年度別のビシエドのバンテリンドーム(ナゴヤドーム)での打撃成績>
2016年 8本塁打32打点 打率.232
2017年 8本塁打32打点 打率.261
2018年 7本塁打32打点 打率.314
2019年 5本塁打53打点 打率.366
2020年 6本塁打42打点 打率.245
2021年 3本塁打16打点 打率.271
打率こそ波があるが、2018年以降ビシエドは打点チーム1位(2018年はアルモンテと同打点)。チャンスでしっかり打点を稼いでいる。
バンテリンドームではビシエドが反対方向に打つホームランが名物のようになりつつある。