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寂しすぎる…横浜文化体育館の解体工事の様子を元プロレス記者が追跡! 思い出した鼻をツンとつく匂いと和室のプレスルーム
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph byKeisuke Takagi
posted2021/05/27 06:00
着々と解体工事が進む横浜文化体育館。寂しさとともに、当時の思い出が蘇ってきた(写真は5月25日現在)
まだ国内に大型の音楽用アリーナの絶対数が少なかった昭和時代、文体はスポーツ以外でも、さまざまなコンサートや歌謡ショーの舞台となっていた。
横浜文化体育館の公式ホームページを見ると、ザ・プラターズやナット・キング・コール、ベニー・グッドマン(楽団)、『ローハイド』の主題歌でおなじみ、フランキー・レインやアート・ブレイキー。さらには本人や楽団の名前よりも、超長寿ラジオ番組『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』(TBS)のテーマ音楽があまりに有名なエドモンド・ロス(楽団)、ザ・ベンチャーズ、アストロノウツ、ザビーチ・ボーイズ、アダモ、ポール・モーリア(楽団)、クイーン、セルジオ・メンデス、ボン・ジョヴィ、オジー・オズボーン……。
錚々たる海外アーティストが文体でコンサートを行っていたことがわかる。
前田の機嫌が悪かったらどうなるんだ
あれは2000年前後のことだった。
プロレスや格闘技興行の場合、報道陣用のプレスルームは会場を入って左側に位置する1階フロアの会議室が使用されるのが常なのだが、前田日明率いるリングス興行の際、選手控室数の関係からか? それとも単なる手違いか?
その日に限っては、いつもの会議室がTV中継クルーに割り当てられ、新聞や雑誌の報道陣には、舞台脇の狭い階段をせっせと上った狭い畳敷きの和室があてがわれていた。
新聞や雑誌の記者やカメラマンは、試合の合間に細かい記事を書いたり、会社に連絡したり、カメラマンはフイルムや電池を入れ替えたり、締め切り時間の都合によってはバイク便で撮影したばかりのフイルムを会社へと発送したりと、何かと忙しいものだ。カメラなど機材をガチャガチャさせつつ、暗くて狭い階段を上り下りするのも難儀だし、和室への出入りでその都度、靴を脱いだり履いたりするのも面倒だ。
そんなわけでベテランの記者やカメラマンはブーブー文句を垂れつつ、その場にいた私に「おい、お前はリングス担当記者なんだから、代表して前田(日明)に言って部屋を替えてもらってこい」なんて命じてくる。どこの世界でも一緒だろうが、こういう時に“汚れ任務”を請け負うのは若手だ。
そんなことを伝書鳩よろしく伝えに行ったとて、その時に前田さんの機嫌が悪かったりしたら、どういうことになるか? 担当記者なればこそ大体のオチが想像できる。試合開始時間も押し迫っているし、今さらリングスのスタッフに告げても迷惑だろうな……とも感じていた。