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田中将大の帽子にある“見えない保険”…「192キロ」の打球直撃から投手を守るヘッドガード秘話【米開発者を独占取材】
posted2021/05/15 06:01
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Sankei Shimbun
今季、8年ぶりの日本球界復帰を果たした東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大。マウンドに立つ彼の帽子の内側には、NPBの選手としては初となる特殊なプロテクターが仕込まれている。
帽子の右側頭部にはさまれた黒く薄いプロテクターの名は『プロX ヘッドガード・フォー・ピッチャーズ』(以下、プロX)。投手の頭部を強い打球から守るそれは、アメリカのセーファー・スポーツ・テクノロジー(SST)社によって開発された。
田中がプロXをつけるようになったのは、ヤンキースに所属していた昨年7月4日、打撃練習での投球中、右側頭部にライナーを受けたからだ。マウンドに倒れ込んだ田中は、直後の精密検査で軽度の脳震盪と診断された。
SST社を創業したマット・マイヤー氏が、当時を振り返る。
「あの日、私はフロリダでバカンスを過ごしていて、ヤンキースのチーフトレーナーから“田中用と他の投手用にサンプルを届けてほしい”というメッセージをもらいました。サンプルを送った数日後、彼がプロXの薄さと軽さを気に入ったという報告があり、実戦で使用することを前提に商品を出荷しました。その後、ずっとプロXを着用してマウンドに上がっているわけです」
アメリカではアスリートの身体を大切にする意識が高く、日本球界で急速に普及した打者のフェイスガード「C-FLAP」もアメリカからもたらされた。
ただ、C-FLAPのついたヘルメットをかぶり、ヒジや手首、足首などを防具で覆った打者に比べると、プロテクターをつけていない投手は極めて危険な状態にさらされている。
彼らはボールをリリースした直後、無防備に近い状態になる。そこに強烈なライナーが飛んでくる可能性があるからだ。