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藤井聡太二冠“日付越え逆転勝利”で勝率.976 「アリ地獄」的な順位戦、谷川浩司九段が「イチローvs大谷」にたとえたワケ 

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posted2021/05/14 11:02

藤井聡太二冠“日付越え逆転勝利”で勝率.976 「アリ地獄」的な順位戦、谷川浩司九段が「イチローvs大谷」にたとえたワケ<Number Web> photograph by Japan Shogi Association

第80期順位戦B級1組1回戦、三浦弘行九段に勝利した藤井聡太王位・棋聖(撮影別日/代表撮影)

あの震災の時、中断中に考えるのはズルいのではと

<名言3>
自分の手番で中断しているので、(持ち時間が消費されない)中断中に考えるのはズルいのではないか、と少し思ったんです。
(松尾歩/Number1018号 2021年1月7日発売)

◇解説◇
 時は2011年3月11日にさかのぼる。

 この日は第69期B級1組最終一斉対局が東西の将棋会館で開催されていた。タイトル経験者から若手有望株までが入り混じって熾烈な争いとなるゆえ「鬼の棲み家」とも呼ばれているB級1組だが、最終対局で屋敷伸之九段と松尾歩七段(当時。現八段)が来期A級の昇格を懸けて直接対決に臨んでいた。

 しかし午後2時46分、あの激しい揺れが対局場を襲った。ほどなく連盟理事が対局の中断を各棋士に伝えた。

 ただ、ここで手番だった松尾七段の脳裏には、公平性についての思いが脳裏にかすめたという。勝負が始まってしまえば、どのような措置を取ろうとも手番や持ち時間の関係で完璧な公平性を維持するのは難しくなる。

「だから考えないようにと……完全に考えないでいられたかどうかは分かりませんけど……」

 対局は午後4時に再開、4時15分から6時まで夕食休憩という流れになった。発生から4時間以上経ってから松尾七段が一手を指して再開した対局はしかし、“時間をもらった”はずの松尾七段が「3手先の対応をうっかりする致命的なミス」をしたことで、形勢が一気に傾いた。

 A級昇格が決まった屋敷九段は「棋士としての務めは果たせたと……」と語ったという。微妙な心理の動き1つで勝負は決まる。順位戦という舞台で起きた残酷なドラマだった。

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